査読者1

(Primary)レビューサマリ

確信度が高い査読者はいないが,いずれも「5: 採録」「4: どちらかと言えば採録」としているため,プライマリの評価を「5: 採録」とした.

本研究の目標はあやとりのパターン認識である.この目標を達成するための実装として,導電性繊維を編み込んだ紐の抵抗値を両手の手袋に装着された電極で計測している.結果として,3種類のあやとり連続技(それぞれ10以上のあやとりパターンで構成される)をF>0.8で認識できている.

これまでもあやとりの認識を行う研究は存在したが,差分が認められる.①紐に計測用の電極を取り付けた先行事例は,電極が絡まるため複雑なパターンを認識できず,②あやとりを画像認識する先行事例はオクルージョンに弱い.本研究は紐自体に電極などがなく,オクルージョンも存在しないため先行事例より有効な事例は多く考えられる.

どの査読者も基本的には新規性・有用性・記述の質を認めています.技術的に突っ込めるポイントはありますが,シェファーディングなしの採択で問題ないと思われます.

(Primary)採録時コメント

あやとりのパターン認識を行うために,導電性のある紐の接触状態を両手にはめた手袋の電極から見た抵抗値で判別している.紐に電極を付ける先行研究や画像認識を行う先行研究に比べ,通常のあやとりにかなり近い状態で技認識を行えることが有用と思われ,採録と判断された.発表では,紐の長さを変えた場合のキャリブレーションや将来のアプリケーションなどを議論できると良いと思われる.

(Primary)論文誌として必要な改善点

N/A

総合点   (1: 強く不採録~6: 強く採録)

5: 採録

確信度   (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2: やや専門からは外れる

採否理由

本研究では,あやとりの技を電気的に認識するシステムを提案している.具体的には,両手10本の指に取り付けられた電極が導電性の紐によって接続されており,あやとりのパターンによって変化する2本の指の間の抵抗値を分類に用いている.
新規性・有用性・記述の質の3点がすべて評価できるため,採録の判定とした.

新規性・有用性
既存研究として挙げられているString Figuringとアプローチは似ているが,本研究では紐自体に電極を搭載しないため新規性があり,有用性も比較的高いと思われる.一方,教育以外の応用例がクリアではなく,アルゴリズム的な貢献が大きいわけでもないので,ぜひ現地ではデモ発表もしていただき,発展性について議論できると良い.また,連続技を混ぜた場合の分類など,もしもうまくいかないケースがあるのであればそれも議論したい.

論文自体の記述の質
高い.

改善コメント

2.2 あやとり技の認識手法
3段落目:「本システムではチューブの...」
先行研究を本システムと呼ぶと,提案手法と誤認される可能性がある.

査読者2

総合点   (1: 強く不採録~6: 強く採録)

4: どちらかと言えば採録

確信度   (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

1: 専門外である

採否理由

あやとりに注目し,現状の教材の不足点を上げ,それを解決するために自動で次の操作を提示する教材が必要だと主張しています.その教材の実現のために,導電繊維を用いたあやとりの形状を認識するシステムを提案しています.

質:
引用すべき以下の自身の先行論文について,引用してないように思われます.読者に対して不親切に感じました.

永山 晃誠,高田 崚介, 導電性あやとり紐を用いた形状変化する入力インタフェース, WISS2023

また,4.1の変形工程についての説明が分かりづらいです.本論文と「山田ら[17]」の定義との差分が理解しづらく感じました.本論文の工程が何があると定義したのか列挙してから,「山田ら[17]」の定義との比較を述べたほうがわかりやすいと思います.また,図5の各工程が定義のどの動作に対応するのか,書かれていないため不親切に感じました.

新規性:
あやとりを導電体とし,各指同士に付けた接点の抵抗値を図ることにより,技を認識する手法はとてもおもしろいと感じます.

有用性:
あやとりを支援する必要性についてもちゃんと論じており,あやとりの技を認識する必要性についてちゃんと説明されています.
紐の構造についても先行研究に比べて優位性・差分があることがちゃんと示されているため,読者に親切に感じました.
ただし,著者は1章で「ユーザの手の大きさに合わせて紐の長さを調整できる」と主張しています.しかし,その紐の長さが変わったことで抵抗値が変わると思いますが,それに対してのロバスト性の議論が論文中にされておらず,このような利点が提案手法にあるか疑問です.

結論:
論文の記載については問題が認められるものの,有用性・新規性については認められるため,上記のような総合点としました.

改善コメント

4.4にて「LOSO交差検証によって得られたF値,〜大きな差が見られないことから,本システムによって得られる測定値間には個人差による影響が少ないと考えられる」と記述していますが、LOSOの結果がなぜ個人差の検証に関わるのか理解が難しく感じます。この部分の記述を改善することでより理解が深まると感じました。

また、提案システムの手袋をしてあやとりをすることの,操作性の変化について気になりました.この点が論文中で触れられると良いような気がします.

ほかにも、紐の経年劣化による抵抗値の変化などの記載もあるとより知見が高まると思います.

査読者3

総合点   (1: 強く不採録~6: 強く採録)

5: 採録

確信度   (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2: やや専門からは外れる

採否理由

導電繊維を編み込んだ紐での、あやとり技の認識システムの提案である。
新規性としては、高い精度で認識ができており、YouTubeや書籍、WEBサイトなどと連携することで、技ができたら次の技の作り方を提示することが可能になる。

導電繊維を編み込んだ紐を用意し、紐同士が絡まった接触点において短絡が生じることで電気抵抗値が変化する現象を用いて、どのあやとり技であるのかを認識している。
あやとりは手や紐のオクルージョンが多く、画像を使っての認識や、Leap motionなどのハンドジェスチャー認識装置では認識が困難であると考える。

あやとりの形状把握に紐の電気抵抗値の変化という着目点の新規性、実際に連続技への適用、高い精度での認識、という点で、採択に値すると判断した。

実際に実験も行っており、有用性も高い。
技ごとの分類モデル生成の必要性など、課題も残されているが、WISSで議論することで今後の発展につながると考える。

論文自体の記述の質も良く、理解しやすい。

改善コメント

採択の際にはデモも展示していただき、ぜひ参加者が体験できるシステムとして展示して欲しい。

査読者4

総合点   (1: 強く不採録~6: 強く採録)

4: どちらかと言えば採録

確信度   (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2: やや専門からは外れる

採否理由

・提案されている内容の新規性(先行研究との差分が十分にあるか)
導電糸を用いた配線形状の変化による、あやとりの技の認識は、カメラを用いた従来の手法に比べ、オクルージョンの問題がない良さがある。一方で、導電テープを貼った手袋を介して導電糸に流れる電流の変化を見るという手法の提案に関して、なぜこの手法が良いのか、単純に抵抗値変化を見ただけなのか、それともあやとり技を認識するための特有なセンシングの課題があり、それを解決する手法であるかがわからない。

・有用性(実際に役に立つか),正確性(技術的に正しいか)
多くのあやとり技を分類でき、あやとりの工程を正しくできているかの検証に役立つ。

技ごとの分類モデルを用意する煩雑さがある点と、あやとりで構成した形状が似たような場合の識別(連続技1の3と4、6と7)の識別をどう行うかが今後の課題である。現状の方式だと、形状が似ている場合の識別結果が悪くなるのが限界なので、カメラを併用したマルチモーダルなセンシングが必要だと思われる。


・論文自体の記述の質(分かりやすく明確に書かれているか)

プロトタイプと評価含めて、再現できるほど正確に書かれている。

改善コメント

銅テープだと、剥がれやすい、酸化しやすいなど、耐久性・安定性に課題があるので、銀メッキの導電性糸で作った手袋を利用した方がよい。