査読者 1
総合点
5
確信度
3
採否理由
本提案では3Dプリンタを使って一体造形を行うことを目的として、回転機構について実験を通して、サポート材が少量ですみ、かつ取り除きやすく、作動時の不可を分散させるような機構の設計を行い提案している。
具体的には、課題として、
1)作動部と受動部に適切な隙間が必要
2)サポート材除去問題
3)強度
の3点をあげ、これらを解決するための設計を提案した。
実際に応用例として、キャタピラベルト、サーボスライド、プチ三脚を作成して議論している。
<新規性>
これまでにない形状を設計してそのパラメタ等についても実験を行うことで適切な値を見つけており、本稿で考察された実験および設計指針は、3次元プリンタを使って一体型成型で回転機構をもつものを作るユーザにとっては有益であると判断する。
一方、関連研究として、未踏事業2018年度採択の片倉 翔平氏が「3Dプリントするオブジェクトの動きを3Dプリンタ上で表現するためのソフトウェアプラグイン」https://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/2018/gaiyou_in-3
と、一体型で動作機構を持つ3次元プリント手法を提案しています。
参考:未踏事業成果報告会https://www.youtube.com/watch?v=hkhJ6z_7r98
関連研究としてこれに触れながら、差分を明確に示してもらえると読者にとっては有益と思います。
<有用性・正確性>
論文中に示された応用例は著者による作品と思われる。実際に制作された物体からは一定の有用性はあると判断できるものの、ユーザに自由に回転機構を持つような物体をデザインしてもらっての比較評価は行っておらず、本提案手法の有用性は不明である。
<論文自体の記述の質>
とても丁寧に書かれておりわかりやすいです。
図13, 14, 15は表として表記してください。今の表では解像度が低く読みづらいので文字データとしてPDFに埋め込むことを推奨します。
この研究をよくするためのコメント
採録判定時のコメント
新規性といった点では、すでに他の製品等でよいものがあるので弱いと考える。一方、実験を行った知見は有益である。これらを総合的に判断してショート採録が妥当との判断となった。
レビューサマリ
どの査読者も提案手法の新規性の点では弱いと感じています。デュアルエクストルーダー対応の3Dプリンタは想定しない、など、本手法を使用する状況をきちんと仮定した上で、議論する必要があるでしょう。また、他の製品等にも触れて議論してほしいと感じています。
一方で、本稿に記載されていた実験およびそれにより得られた知見は有益であると判断します。こういった内容をまとめた論文も新しいです。これらは知見として共有するに値すると判断しました。
これらを総合的に判断してショート採録とさせていただきます。最終原稿を作成する際には、懸念事項であった新規性に関する議論も含めていただけるとよいかと思います。
その他コメント
デュアルエクストルーダー対応の3Dプリンタ+水溶性フィラメントは、すでに
ツールもあり、amazonでも購入可能であるほど、一般的に利用可能
(なおかつ、水溶性サポートの自動充填は、ソフトウェアで行われるので
ユーザは、普通に回転機構を設計すればいい)ですので、その点はぜひ触れてほしいとの意見がありました。
水溶性フィラメント使わなくても、本研究は実現できましたというのは
WISSとしては、十分意味があると思いますので、論文中で触れるか、発表の際に含めていただくかするとよいと思います。
査読者 2
総合点
5
確信度
2
採否理由
本論文では、3D プリンターによる一体造形式回転機構の提案とのことであるが、
デュアルエクストルーダー対応の3Dプリンタで、水溶性フィラメントを利用すると、
本提案を全く考えなくていいので、そこを踏まえた提案に言及する必要がある。
(背景、もしくは関連研究で必ず触れないといけないと考えられる。)
また、すでに一体造形式回転機構が存在し流通している。
一体成形レンチ
https://www.thingiverse.com/thing:170192
FAB365 3D Printingの一体造形式回転機構
https://fab365.net
https://www.youtube.com/channel/UCRDdwl3dcosgjNhJSRIAmMA/videos
ただし、これらは、設計手法が開示されない(すでに業務として各社がノウハウをためている)ため、
第3者が作ることは困難である。
今回の論文は、第3者が容易に一体造形式回転機構を構築できるヒントを与えるもので、
その点では十分、価値があると考えられる。
この研究をよくするためのコメント
(私だけかもしれませんが)
まず、提案「手法」がわかりにくい。
3.1で一体造形の基本機構と課題に触れられているので、
それを受けた、本論文における提案が必要だと考えられる。
査読者の勝手な解釈であるが、5章の「基準モデル」が、提案ではないか。
また、基準モデルがなぜ重要で、基準モデルの知見が、一般の設計に
どのように生かされるかに触れないと、読者にとっての有効性がはっきりしない。
さらに、温度、湿度、ABSの品質によって、出力時の
膨張度合いが変化するはずである。ということは、条件によっては、
動作しない可能性がある。
そのあたりを調べてみるといいかもしれない。
また、4章の応用例が、5章の基準モデルの議論の前に出てきているので、
読者が本論文を読んでも、提案手法をどのように生かしたのかが、わかりにくい。
査読者 3
総合点
7
確信度
3
採否理由
とても面白く,特に3Dプリンタを利用している人々には具体的で有益な提案となっています.
新規性,有用性,正確性,記述の質,いずれも採録のための基準を超えていると考えられますので,ロング採録が妥当と判定しました.
提案手法をサポートする評価実験が行われていることも,論文の質を高めています.
WISSでの議論を踏まえてさらに研究を発展させ,トップカンファレンスで発表されることを期待しています.
一方,気にある点が数点あります.
例えば,本研究ではエクストルーダーが1つの3Dプリンタを暗黙のうちに想定しており,デュアルエクストルーダーについての記述が見当たりません.デュアルエクストルーダーの3Dプリンタと本手法の関係(例えば,組み合わせが可能なのか,さらなる改良が可能なのかなど)について記述を加えることと,より論文の品質が高まると思われます.
また,図3のように軸形状を変更したときの違いについて,より詳細な説明があるとさらによいと考えます.サポートが不要という特徴から,提案手法に適した形状であることは十分に理解できますが,動作の観点から見たときの違い(例えば,がたつき)についても記述があると,さらに読者にとって有益です.
この研究をよくするためのコメント
採否理由に書いた2点の他に,目的とする「固さ」を構造に取り組むことも考えてみてはいかがでしょうか.現状では,クリアランスの調整で行うことが書かれていますが,それだけでなく,例えばテーパーの角度を調整することや,突起を付けることで「固さ」を変えることができれば,さらに研究が広がると思いました.