査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

高速のプロジェクタでモザイク状の模様を高速に変化させて投影することで、ユーザ側に特殊な装置を必要とせず、動いている人にだけ注目を集めるような情報提示手法を提案している。有用性の立証が不十分であるものの、新しい手法の提案としてはWISSで議論する意義があるという結論になった。以上の結果から、ショート採録(条件なし)と判断された。

[メタ] 査読時のレビューサマリ

レビュースコアは4,3,2,3で、平均が3でした。新しい手法であるものの、気軽にインストールできるほどの簡便な機材ではなく、実際に効果がどのくらいあるのかが直感的には確信を得にくいというのがレビュアー間の主な共通理解でした。より詳細な評価実験により、有用性が顕著に示せると強固な論文になると思います。

[メタ] その他コメント

採録条件ではありませんが、特にアイトラッカーを用いて実際にユーザがどこを見るのかという評価実験のデータがあれば、ぜひカメラレディに盛り込んでいただけると説得力が高まると思います。ご検討ください。

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

高速のプロジェクタでモザイク状の模様を高速に変化させて投影することで、ユーザ側に特殊な装置を必要とせず、動いている人にだけ注目を集めるような新規の情報提示手法を提案している。そのような性質をもつ手法は広告等でニーズがあることがうかがえる。提案手法の技術的記述は正確であり、再現可能な情報提供がされている。論文の記述は明瞭であり、わかりやすい。一方でボトムアップに顕著性を計算する手法により、手法の有効性をある程度示しているが、主張する効果に強い確信が得られるものではないと感じた。 以上より、4: どちらかと言えば採録と判定した。

この研究をよくするためのコメント

5章の実験において計算された顕著性のアルゴリズムが知りたい。おそらく2.1節で述べらている「ボトムアップの顕著性」の関連研究のいずれかの手法によるものだと考えられるが、明示されてないように読めた。評価実験が妥当であるかどうかは採用した顕著性のアルゴリズムに依存すると考えられるため、重要な情報であると思われる。 また、5章の実験は対象とした事例数、実験協力者数が少ないため、どこまで一般化できる知見なのか疑問は残る。より充実した実験を実施することにより、有用性の立証がより堅固なものになるだろう。 typo? p.2 右カラム第一パラグラフ「本手法,」→「本手法は,」


査読者2

総合点

3: どちらかと言えば不採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

新規性 画像内の視線誘導したい箇所をモザイク状に分解し, 高速に重ね合わせることで, 歩行などの動作状況下において該当箇所の顕著性を向上させる新規な手法を提案している. 有用性 本論文では, 視線誘導したい箇所の顕著性の向上が可能であることを実験を通じて示しているが, 筆者らも認めているように実際にユーザの視線が効果的に誘導されるかは明らかでない. そのため, 現時点では提案手法の有用性は判断できず, 基礎検討の内容に留まっているといえる. 正確性 提案手法のスケーラビリティについて, 以下の不明点がある. 1. 提案手法は中心視野と周辺視野のどちらを対象とするのか (有効であるのか) , または両方を対象とするのかを明記する必要があると考えられる. 例えば, 応用例には広告やポスターなどが挙げられているが, こうしたコンテンツの前を通過する際には, 中心視野で注視するよりも, 周辺視野で目にする場合が多く, 一方で商品展示などの場面では中心視野で捉える場合が多いのではないかと思われる. 中心/周辺視野の特性を踏まえると, 提案手法の有効性が異なる可能性があると考えられる. 2. 指定領域の上限/下限範囲 (効果的に視線誘導できると思われる領域サイズ) の条件が明らかでない. また, ユーザと投影面までの距離にも依存すると考えられるため, 適切なサイズに設定するためにはユーザの位置のトラッキングが必要なのではないかと思われる. 記述の質 上記の点を除き, 論文の記述は分かりやすく明確である.

この研究をよくするためのコメント

タイポ: Sec. 2.2 「本手法,運動状態の ...」-> 「本手法は, 運動状態の ...」


査読者3

総合点

2: 不採録が妥当

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

現象仕組みとしては面白いものであるが、インタラクティブシステム、人が使うことを想定すると、利用シチュエーションが難しさがある。 顕著性という言葉を使うが、ユーザーにとってはノイズや定時の不具合にも感じられそうでありその区別ができるのかについての記載がない。評価からは「モザイクが観測された」「画像の一部が他の 部分と違うように感じた」「画像がランダムで点滅 しているように見えた」 とあり、このコメントからではシステムの有用性がわからない。 また、人は移動中の場合それに対して注視しない限りは、周辺視で見る可能性があるがそれに対する記述がない。評価において歩いているときに見るとされているが、歩いていて注視してなくてもそれに気づくのかについてもよくわからない。 アプリケーション項目では、広告に対する視線誘導については広告に使う程度で、具体的にどのような広告に使うのかの例示がなく、アプリケーションの説明になっていない。単純に本手法の特徴以上の魅力の説明になっていない。そもそも図1と同じである。 そのほかコメント 本研究のモチベーションに近い効果のものとして、凸版印刷のモアレを使ったディスプレイがある。 https://www.toppan.co.jp/news/2019/07/newsrelease190709_1.html

この研究をよくするためのコメント

システムの現象としては面白いものの、人にとっての価値の部分が伝わりにくいところです。アプリケーションがこの仕組みを用いることで良さそうと感じさせるものが例示できてるとよいと思います。

査読者4

総合点

3: どちらかと言えば不採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

本研究では、運動中の観測者に対してのみ働き,静止中の観測者には影響を及ぼさない視線誘導手法を検討している。具体的には、画像をモザイク状(赤、緑、青、黒の正方形要素で構成)に分解したフレームを4枚分用意し、それらを高速に重ね合わせることで、静止中の観測者には(時間積分によって)オリジナル画像と同じ、運動中の観測者には画面がモザイク状に見えるようにしています。アイディア自体は面白いですが、このアプローチが実用的なものになりえるのか、は疑問があります。 - 生成結果のクオリティについて: 生成結果・動画を見ましたが、正直「モザイク処理」の効果はほぼ分かりませんでした。少なくても私は「どこにモザイクあるの?」と何度も動画を巻き戻してようやく見つけた程度で、ほぼ視線誘導されませんでした。なので、(今後の展望として記載されていますが)アイトラッカーによる実際の視線がどうだったのか、を示してもらわないと、有用な手法であるとは言えないかなと思います。 - 本手法のメリットについて: 「はじめに」の章において、特別なトラッキング装置を用いる必要がないこと (= 簡易的である)を長所として主張しています。しかし、本システムではDynaFlash(発売当初は400万円だったかと)を使用しています。本手法の適用方法を考えると、一つの広告ごとにハイスピードカメラを設置しなければならず、(それは、かなり特別な環境なので)簡易さを主張するのは違和感があります。 また、特殊な環境を求めるわりに、広告に小さなモザイク以外の効果を与えることができません。 私には、モザイク効果はほぼ分からなかったので、「ディスプレイ(広告の前)前にWebカメラを設置し、ディスプレイ前に来た人物を検出 + 検出結果に合わせてディスプレイの表示方法を変える」ほうが視線誘導しやすいのでは?と思いました。 - モザイクのサイズ: 本論文ではモザイクのサイズなどのパラメータをヒューリスティックに決めたとありますが、これらの違いによる印象はかなり変わってくると思います。そこで、パラメータを変更した場合の結果など比較検証したほうが良いかと思います。 - 顕著性マップについて: 図7~10, 12~15ではHouらの顕著性マップを使用していますが、手法自体も比較的古く、 各モザイクフレームの顕著性などを表示しても、実際の人間が知覚するものとも異なるので、それほど大きな意味を持たないのでは?とも感じます。近年では視線情報や深層学習モデルなどを用いた顕著性マップ生成手法もあるので、顕著性マップ自体を図として示し、クオリティを考察するなら、最新の手法の利用を検討すべきかなと思います。 - ユーザによる観測評価: 被験者は「モザイク処理した領域を事前に説明されているのか」「何か所モザイク処理しているか」が不明です。もしこれらが既知の場合は、被験者が「モザイクが観測された」との回答は、意味がなくなってしまいます。(ある意味予想通りですが)瞬きをすると時間積分的にモザイクのように表示される点も、それほど有用性がないことを示しているのでは???と感じてしまうものです。なので、たとえ簡易的なユーザ評価だとしても、実験の設定を書けるだけ書いてもらいたいです。

この研究をよくするためのコメント

本手法は、多人数が同時にディスプレイを見るような状況(例:一人だけ立ち止まって広告を見ていて、数名が歩きながら広告を見ている)において、各人物に違った画面表示を提供できるかもしれません。 しかし、はじめから注目させたい領域が決まっているのなら、人物が移動しながら見ても目立つようなデザインにしておけばよいだけで、人によって違う表示にする必要はないと思います。 (特に一か所だけ見せることが目的なら、静止中の人にも特定の箇所が目立てばいいだけなので。) なので、本手法がどのような状況ならうれしいのかを納得できるようなシーンを紹介してもらいたいです。 (一つの広告に高額なDynaflashをまで用意しなければならない状況もイメージできなくなるため)