査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

本研究は、自動運転車が視線提示を行う場合に、状況に応じて適切に横断するか否かを判断できるかを調査した研究である。自動運転車による視線提示自体は既発表の内容であるが、危険な状況(自動運転車が歩行者を識別していない状況)における歩行者の判断に焦点を当てた点、およびそこから得られた結果は面白く、活発な議論が期待されることからロング採録と判定された。

[メタ] 査読時のレビューサマリ

判定は4,5,4,4であり、全ての査読者が採録/どちらかと言えば採録という結果でした。査読者間での議論により、論文の記述の不備や説明不足の箇所、考察の不足などの課題はあるものの、提案システムおよび得られた実験結果について活発な議論が期待されることからロング採録(条件付き)と判定しました。採録条件は以下の3点とします。
1.視線提示を選択した妥当性についての追記
2.実験参加者への教示内容に関する説明の追記
3.日本語として冗長であったり不明瞭な表現の点検 各条件の詳細については、各査読者のコメントを参考にしてください。

[メタ] その他コメント

採録条件として提示した内容以外にも、各査読者の指摘事項は有意義なものが多くありますので参考にしてください。

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

本研究は、自動運転車が視線提示を行う場合に、状況に応じて適切に横断するか否かを判断できるかを調査した研究であると理解しました。本論文で焦点を当てた危険な状況(自動運転車が歩行者を識別していない状況)における歩行者の判断に関する調査は、自動運転車の普及を見据えて有用であると考えられます。 使用したシステム(視線を提示可能な自動運転車)自体は過去の研究でも用いられていることから、本論文の貢献は調査によって得られた知見にあると考えます。ただし、実験内容や結果の記述に一部不明瞭な点があり、得られた結果の妥当性にやや疑問を感じました。 まず、実験に当たっては実験参加者に自動運転車の視線の機能についてどのような教示を与えたのでしょうか?例えば、視線が自動運転の認識結果を表していることや、適切に認識された場合には車両が停止するということは実験参加者に伝えられていたのでしょうか?仮に伝えられていない場合、自動運転車のアルゴリズムや道路交通法に対する各参加者の理解度が横断判断に影響を及ぼしていると考えられます。例えば今回の実験設定は信号のない横断歩道ということで、自動運転車&道交法について適切に理解していた場合(横断歩道で歩行者がいる場合車両は必ず停車しなければならない)、歩行者をセンサで認識している場合法順守の観点から必ず停車すると考え横断可と判断するかと思います。一方で道交法を理解していなかったり、そのような規則がある場合自動運転車は必ずそれを遵守するアルゴリズムで設計されているであろうという理解が無ければ、確信を得られず横断しない判断をするかと思います。よって今回の結果を解釈する上では、実験参加者に自動運転車についてどのような教示を行ったかの情報が必要であると考えます。 加えて、現状では得られた結果の性差について「このことから,男性歩行者と女性歩行者は,自動運転車と目で対話する際に,異なる道路横断行動をとることがわかった.」という記述のみですが、このような結果となった理由について考察が必要かと思います。 また、細かい点ですが図8の全体のエラー率に関して、こちらも図9,10と同じようにCritical/ Non-criticalを区別して記載すべきかと考えます。 論文の記述の質は、前述の実験内容や結果の記述以外の部分では論旨が明瞭で分かりやすく記述されていると感じました。ただし、一部日本語として冗長であったり分かりにくい表現が見受けられますので、点検が必要であると考えます。 上記の内容を総合的に判断し、「4: どちらかと言えば採録(ショート)」と判定します。 なお採録の場合には以下を条件とします。 ・実験参加者への教示内容に関する説明の追記 ・日本語として冗長であったり不明瞭な表現の点検

この研究をよくするためのコメント

実験設定について、信号のない横断歩道だけではなく、信号も横断歩道もない場所においても調査すると面白いのではと感じました。 信号も横断歩道もない場所では、自動運転車や道交法について理解していても自動運転車が停車するかどうかの判断が難しくなると考えられ、そのような環境でどのような結果になるか興味を持ちました。 (結果によっては、単純な視線提示だけでなく横断を促す場合にウインクするなど、拡張的な表現方法を検討するのも良いかと思いました)


査読者2

総合点

5: 採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

本研究では,目を付与した実験用自動車を用い,視線の提示によって交通事故を減らすことができるのかを検討した.仮想環境での実験から,視線提示により,歩行者は道路横断の判断を正しく行えた. 論旨が明確でよく構成されており,評価実験の結果も興味深いことから,採録と判断します. 誤字が散見されるため,それらが改善されればより記述の質が上がると思います. 誤字と思われる部分抜粋 p.1測定った. p.2コミュニケー ション(半角スペースの削除)

この研究をよくするためのコメント

実験では男女間で異なる道路横断行動をとっている点も興味深いですが,これが単純な性差であるするには被験者の情報が足りないと思われます.例えば運転に慣れた人とそうでない人では,わたるタイミングが分かりづらいといった違いがある可能性はあると思うので,そのあたりが同程度なら,そう記載があるほうが説得力があるように感じました.


査読者3

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

車に視線提示可能な機構を取り付け, 機構の有無により道路横断時の判断に差が生じることを示した論文である. 先行研究[7]で採用されたものより危険度の高いシナリオを採用し, 視線提示の機構有無による差を調査した点に新規性があるといえる. 一方で, 危険度の高い状況であれば, 視線提示よりも直接的な注意喚起が適切であると考えられるため, 有用性には疑問がある. また, 視線提示以外の手法の検討について記載が無く, 手法選定のプロセスの妥当性は明らかでない. 論文の記述は概ね正確である. 以上より, 視線提示を選択した妥当性についての追記があれば採択可能と判断した.

この研究をよくするためのコメント

「すでに歩行者が歩いて渡っている」ような危険度の高い状況であれば, 視線提示よりも直接的な注意喚起 (人間が運転する車両のクラクション相当) の方が適切であると考えられる. 関連研究の節では視線提示以外の手法は列挙されているのみで, なぜこれらの手法ではなく視線提示を選択したのか, 他に効果的な提示方法の候補は無かったのかが明確ではない. 「危険な道路横断を低減」するという目的に対し, 視線提示を選定した妥当性について加筆することが望ましい. 5節の実験結果で「効率性」「安全性」という言葉を用いているが, critical casesでの有意差有無から安全性を, non-critical casesでの有意差有無から効率性を解釈しているという説明を加筆すると理解しやすいと感じた. 文法誤りや語句のゆらぎあるため修正されたい.
・「視線の提示によって交通事故を減らすか」という研究課題 -> 減らせるか
・重要な場合・クリティカルコンディション
・目線なし車・目なし車 他
・提案手法の節で提案手法についての説明がされていない. セクション名を適切に修正すべきである.

査読者4

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

著者らは車に目をつけることで歩行者と車のコミュニケーションを実現させ,それが交通事故現象につながるかをVRを用いて検証を行いました. 実験の結果、車からの視線提示で歩行者の危険な横断を減少させる可能性や,歩行者の安全感・危険感を高める可能性を示唆しました.また男性は危険な横断を減少させ,女性は安全な状況での不必要な停止を減少できるなど性差も確認しています. 交通事故を減らす目的は非常に重要であり,取り組みもユニークです. 新規性や有用性は確認できますが論文自体の記述の質に課題が残されており,論文全体に修正が必要です.

この研究をよくするためのコメント

実験内容や結果はとても有益だと思われます. 論文自体の記述の質に関して課題が残されていると判断しました. 以下に推敲の一部例を示します.
・しかし,道路横断が少し速くなったり遅くなったりすることは,交通事故(けがや死亡など)ほど重大ではないといえる.交通事故を減らすこと(=正しい判断をすること)の方が,早く判断できるようにすることよりもずっと重要である. →しかし,歩行者の道路横断に対する判断スピードを変化させ,交通事故を減少させることが重要です.
・図5(c): 歩行者は歩き続け,道路(つまり車線)に出る前に道路を横断するかどうか判断する必要がある →歩行者は,道路に出る前に横断するか判断する必要がある
・車(目)が歩行者を見ていない場合 →車からの視線が歩行者に向いていない場合
・図1.実証研究における参加者の視点.(a) 安全な場合,(b )危険な場合,(c) 安全な場合,(d)危険な場合. →実験で提示された映像(a)車両の視線が参加者に向いている(b)車両の視線が参加者に向いていない(C)目がない車両が道を譲らないつもり(d)目がない車両が道を譲るつもり
・()を使用した文章の推敲 論文全体に()を使用して補足されていますが,内容と一致していない用語が多いように思えます.