査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

本研究では、栄養摂取基準に基づいたレシピを提案するアルゴリズムの提案やGUIの実装にとどまらず、シミュレーションによる定量評価、ユーザ評価による定性評価などが行われました。これはWISSの6ページのフォーマットを考えると非常に充実した内容であり、提出されたビデオでも提案システムの挙動がわかりやすく紹介されていました。このため、いくつかの微修正はありますが、WISSでの登壇発表にふさわしい論文として「ショート採録(採録条件あり)」としました。
--- カメラレディ提出後の判定 ---
修正により3つの採録条件は満たされたと考えるため、「採録」とします その一方で、条件1に関するまだ不明瞭な点や新たに生じた誤植(以下に記載)を修正して再提出していただいても構いません 1. 関連研究と提案手法の結びつきを明確に記述する まだ「とても明確になった」とは言えませんが、修正されたことは確認しました
・「1 はじめに」の第三段落で何が簡単ではないかが追記されたのを確認しました
・ただ、個人的には「2 関連研究」の部分にもう少し明確さが欲しいです。例えば、Tengらの手法[16]は1日分の献立ではなく1食分の献立しか扱えないのでしょうか?もし1食分の献立しか扱えないのであれば、提案手法の新規性を示す重要なことなので他の部分の表現を短くしてでも追記したほうがいいです。そのあたりが不明であれば現状の表現で良いと思います
・追記された部分に新たな誤字が増えました(=ことができるからある)。これを修正することはまったく条件ではありませんが、ご自身のために直したほうがいいかもしれません 2. 評価の部分で頻繁に登場する「提案手法」と「従来手法」がなんのことか明記する 指摘自体を直接反映したわけではないですが、原稿が適切に修正されたことを確認しました おそらく「ベースライン」と書くべきところが場所によって「従来手法」となっていたために生じた問題だったのだと思います。そこを修正したことにより読みやすさが改善したと思います 3. 図1は参照する順番に左から並べる 原稿が適切に修正されたことを確認しました

[メタ] 査読時のレビューサマリ

おおむねすべての査読者が、提案アルゴリズム・実装・2種類の評価実験の意義を認めています。また、ビデオを高評価している査読者が2人います。 その一方で、内容が多い分原稿から抜けてしまった情報や、多数の誤植が指摘されています。最終版の原稿では再録条件にとどまらず広く修正していただくととても読みやすくなるのではないかと思います。 また、提案手法におけるユーザの動きが検討されているかという疑問も挙げられていました。例えば、このソフトウェアを使いたいターゲットユーザは誰か、食材を入力とする方法は(そのユーザにとって)使いやすいのか、などです。発表ではそれらの部分に関するコメントもいただけると良いと思います。

[メタ] その他コメント

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

本研究では、ユーザが使用したい食材を入力すると、①最終的に出力されるレシピがユーザの事前入力した好みの食材リストを含んでいるか、②レシピ内の食材をユーザ好みの食材に置き換えられるか、③好みの食材を追加できるかの3点と、さらに④1日の食事に含まれる適切な栄養素の分量範囲を考慮した上で、条件をより高いスコアで満たすレシピを出力するGUIを提案しています。 本文中には、提案するアルゴリズムやGUIの実装、シミュレーションによる定量評価、ユーザ評価による定性評価などが記載されており、WISSの6ページのフォーマットを考えるととても充実した内容だと思います。また、ビデオで提案システムの挙動が提示されているのも良いと思います。 その一方で、個々の部分に着目すると、論文としての粗さが目立ちます: §2 関連研究:これまでに何がなされており、この研究ではそこに新たに何を追加したのかが明確ではありません。 §3 実装:いきなりシステムが登場しますが、そもそもこのシステムは誰のためのもので、そのために何が必要になるのかということが議論されておらず、(仮にページ数的な問題で削られているのだとしても)実装からそれらの要素を読み取ることも難しいです。 §5 ユーザ評価:ユーザ評価で出てくる結論が、シミュレーションの結果とほぼ同様なのが気になります。私はむしろこのシステムを使う必然性や今後の実装のための改善などが議論されるべきなのではないかと思います。 WISSは実装だけでも評価するという姿勢ですが、筆者らはそれに加えて評価も行っているという意味で大変素晴らしいと思います。その一方で、このシステムの新しさ、使いたい人間と必要な要件、それに基づく実装など、根本的な要素が論理的に構成されていないことと、細部の粗さは問題と考えます。また、現状の記述では、集中して読まない限り(この採否理由の冒頭に記述したまとめのような)内容の読み取りが難しいと思いました。その意味で、私の判定は「4: どちらかと言えば採録」とします。 採録条件: 1. 関連研究と提案手法の結びつきを明確に記述する(単に「簡単ではない」と記述するのではなく、これまで何がなされ何がなされていなかった、そのためここを新しい部分として提案したというように明確に記述してほしいです。もしも明確に書けない場合でも、何が簡単ではないか、何をしたら簡単になったのかを書いてください) 2. 評価の部分で頻繁に登場する「提案手法」と「従来手法」がなんのことか、短い文章でかつなるべく早い段階で明記してください。場所は指定しませんが、個人的には3章の冒頭など、細かい部分に入る前のほうがよいかもしれません。 3. 図1は参照する順番に左から並べてください。ただし明確に今の配置に意味があるとすれば、その意味が理解できるように修正しても構いません。

この研究をよくするためのコメント

- 関連研究 > しかし,食事摂取基準に従って複数のレシピを組み合わせながら,1日分の献立を作成することはまだ歓談(簡単?)ではない. 先行研究において、献立の作成はどういう意味で簡単ではないのですか?もう少し具体的な記述が必要です。 また、実装などの詳細に入る前に、提案手法と従来手法がそれぞれなんのことであるか、わかりやすく短い言葉で記述したほうがいいです。5章以降では、読者が提案手法と従来手法の違いをはっきりと認識している前提で議論が進みますが、おそらく現在の記述では読者がその部分を理解するのは難しいです。 要するに、従来手法とはユーザの嗜好を考慮することで、提案手法とはそれに置き換えと追加を足したものなのではないかと推測します。であれば、その点を早い段階で強調したほうがいいです。
- 実装の根拠 (Design Goals, Design Choices) 栄養素の計算と献立提案ができることはわかりましたが、そもそも実装にあたって食材を入力していくという仕組みに至った根拠はなんですか?またターゲットユーザは誰ですか?どのような機能があればそれらのニーズを満たせますか?
- ユーザ評価 ユーザ評価のやり直しは難しいと思いますので要求しませんが、今後やるとすれば①ユーザが実際にこれを使いたいのか(例えばSUSなど?)、②どのようなタスクを設定しその結果何が不満なのか(例えばNASA TLXなど?)を評価すると良いと思います。レシピが栄養素を考慮して出力できるという点はシミュレーションでもわかります。
- 記載の不足と細かいこと
Algorithm 1: Tはなんですか? §6: ポストインタビューとはなんですか?例えばQ1とQ2に対応する半構造化インタビューですか?それとも完全にフリートークのような形式ですか? §6: > 提案手法とベースラインに おける選択レシピの使用食材数の比率は,それぞれ 0.90(SD:0.20),0.95(SD:0.06) > 提案条件とベースライン条件 でそれぞれ 601.1 秒(SD: 869.8),421.5 秒(SD: 463.1)であった. これらの事実は、提案手法のほうが悪くなったということですか?解釈を記載してください 図1: 読者が見る順番に左から可視化してほしいです
- 誤記
§2: 個人適応推薦 [8] 「には」 [...] である. §2: まだ「歓談」ではない.
§2: どちらか一方しか条件をとならない → どちらか一方しかとらない?
表記ゆれ: ベースライン条件 vs 従来手法
§3: 数式中の「score」「Preference」「Nutrient」→立体表記のほうが適切な気がします §3: 数式中でNは大文字だがmは小文字であることに意図はありますか?
§3: mが実質的に2回定義されています > 嗜好食材としてユーザが選択した m 個の食材 > m は全食材候補の数で ある.


査読者2

総合点

5: 採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

この論文では, 嗜好と栄養摂取基準の両方をできる限り満たすことのできる1日の献立をユーザに推薦するシステムを提案している. 1日を通して, またはある一定の期間を通しての献立を嗜好度と栄養摂取基準両方をかなりシンプルなアルゴリズムで考慮できたという点で新規性がある. また, 食材の入れ替えができるようにしたことで, 嗜好食材を増やしつつ同時に従来法より栄養摂取の基準をより多く満たすことになったということからも提案手法の有効性がわかる. 以下のようにいくつか疑問な点もあるがWISS発表での議論を期待する. 一方で図1にある, ユーザが操作するための画面のインタフェースデザインについてはかなり不親切なように感じました. この画面でユーザが一番やりたいことは, まずレシピの選択であるはずです. であるするとまず主食選択 (5) と嗜好食材の選択 (2) が 先にあり, 次に初期の推薦レシピと合計栄養素を表示 (6)(7), そののちに入れ替え (3), といった順番にするのがより自然だとおもいます. また, 必要な材料 (4) とレシピに必要な食材/カートの中身 (8) の違いがわかりませんでした. これらが一致しないとそもそもそのレシピをつくることができないのではないでしょうか?本来は段階的に表示すべきものを一画面に表示しているので情報量が多すぎるようにみえます. 例えば食材選択コンポーネント (1) は 嗜好食材 (2) にかかっていると理解しましたが, そうであるならばこの画面に一度に表示するのではなく嗜好食材リストの下位下層に移すべきだとおもいます. 料理の嗜好は食材だけで決まるものではなく, 味付けなどの調理方法によっても変化します. 例えば, 同じ食材でもある調理方法では好みであるが他の調理方法では好みではない, といったことが起こり得ます. 調理方法によって嗜好が異なる例としては他にも, ある食材単体では嫌いなものが他の食材の味に隠れていることで気にならなくなる, むしろ好みになる, といったこともあります. こうした複合的な要素を考慮することも今後必要になるかとおもいます. 値段や調理時間, ユーザの調理環境なども献立を考える上で重要な要素です. 例えばその人の使えるコンロの数は調理の手間や時間に影響します. また, 野菜などは一つ買っても一回の調理で使い切れない場合があり, 前日からの残量や賞味期限を考慮できるとより実用的になります.

この研究をよくするためのコメント

1日の献立をまとめて推薦していますが, そのうちの一食のレシピを変更すると他のレシピでの栄養摂取基準量も変わってくるのですでにスロットに入っているレシピから不適切なものが出てくる可能性もあるとおもいます. この点について対処はされているのでしょうか?そもそもそういったことが起こらないように代替レシピのリストが作成されるのでしょうか?本文からは読み取れませんでした. 発表する際は補足が必要かとおもいます.


査読者3

総合点

3: どちらかと言えば不採録

確信度

1: 専門外である

採否理由

新規性、有用性: レシピの探索時に、選択された食材との一致度のみではなく、1日単位で栄養バランスを考えたレシピ提案を行うことを提案している。その結果、シミュレーション・ユーザスタディともに栄養バランスが改善されている。たしかに、日々の栄養バランスの組み立ては難しく、査読者自身の場合、「あすけん」等のアプリに食べたものをすべて記録し、不足分はサプリメントで補うなど補助食品に頼りがちであり、共感する部分はある。 問題点: 一方で、そもそもの提案手法におけるシナリオが十分に検討されているか疑問を感じた。提案手法では、ユーザの嗜好の選択の尤度が食材に絞られており、食材ベースでのレシピ探索自体がUX設計として正しいか疑問である。例えば嗜好でいうと「朝は軽めに、昼はこってり、夜はさっぱりしたもの」のように味付けなどをベースに献立を考える、というレシピ探索などがありえそうだが、そういった手法ではなく食材ベースでレシピ探索を行うことの必要性がもう少し述べられると良い。そのため、そもそも日々の食事メニューをどのように決めているか、どういう制約がありえるか、その中で食材ベースで探索することがどの程度妥当であるか検証してほしい。 正確性: 論文に用いられている技術や検証方法は十分に述べられている。 論文自体の記述の質: 十分に分かりやすく書かれている。

この研究をよくするためのコメント

本研究の対象者が「個人の食」とあるが、日々のレシピの組み立てに利用する場合は、どのような体験が提供できるか気になった。 例えば、朝起きたタイミングや寝る前に冷蔵庫の中にある食材をベースにレシピ探索するのか?不足している食材をいつ買い足すのかといったイメージである。 どちらかというと提案手法は日々のレシピの参考というより、嗜好食材をうまくいれつつ日々の栄養素を満たすにはどのようにレシピを考えればよいか、という管理栄養士や生徒の食育などに用いられるアプリケーションのように感じた。そのため、例えば栄養士や調理師の専門学校生、学校の家庭科教育などを想定した実験の実施や、前後での栄養管理の意識変化の評価などを実施すると面白いかもしれない。
細かい指摘:
表3)洗濯→選択

査読者4

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

様々な要素をまとめて一つパッケージとして完成させた提案であり、論文掲載図や補足ビデオを見る限り完成度の高さがうかがえる。その各要素についても、技術的妥当性はいっけん問題なさそうに見える。 しかしながら、例えば食材の置き換えなどは、その妥当性については検証できておらず、しかしおそらくはレシピの組み立ての上で重要な点であるはずであり、実際に食べた際の満足度が提案手法により高くなるのかどうかは定かではない。それ以外でも、例えば主食の扱いは論文の記述からすべてを読み取ることはできないが、パスタを含んだ献立とそうでない献立とでおそらくは品数など違いがありそうであり、実践的であるかどうかの判断は難しい。 細かな課題はおいおいの研究や開発にて十分に解消できそうではあり、将来の人類が利用するであろう献立の立案支援アプリケーションの姿として説得力があるため、ここでは採録と判断し、細部については会場での議論に委ねたい。 なお、随所で情報が不足している感があるが、6ページの論文にしては要素が多いので細かな記述が脱落してしまうのは仕方のないところであろうから、記述の具体性については厳しい判断をすることは避けたい。

この研究をよくするためのコメント

ページ数の制約が厳しいことはわかるが、あまりに情報が不足していて、意図が読み取れない箇所が多い。 一日分の献立を組み立てることを支援するというからには、朝食・昼食・夕食のそれぞれのレシピを選択する際にも同一の選好食材の選択状態を保つということか。例えば牛バラ肉を選択していれば、朝食用のレシピとしても夕食用のおかずレシピが推薦されやすいということか? 朝昼夕の区別をしているのかいないのかについて、補足が欲しい。 上と関連して、5.1節で説明しているシミュレーションについて、1,2,4品目のレシピに白米150gを追加しているのは、朝昼に1品ずつ、夜に2~3品選ぶことを想定してのことだろうか? 一言補足して欲しい。 図1について、各コンポーネントを囲って図示しているのは有り難いが、一方でこの青い囲いも画面の一部であるかのように見えてしまっており、補足動画を観ている者はそうではないことはわかるものの、図でもそれがわかるように構成できないか、検討されたい。 また、食材の置き換えによって直接的な塩分量の低減が図られているのではない、ということを確認したい。つまりレシピ中のしょっぱい食材を、しょっぱくない食材に置き換えることによって塩分量の低減が図られたのではなく、選好食材を取り入れつつ、より塩分量の少ないレシピを選択することができたために総塩分量の低減が達成できた、ということを確認したい(おそらくはそれが著者らの意図であろうと推察する)。なにかしらの形でその情報を文中で明記されたい。 随所に誤字が目立つ。「歓談ではない」「洗濯」など。