当事者のニーズに合致した支援システムであること,手堅く実用的な技術構成であること,当時者による評価がされていること,記述が分かりやすいことなどについて,査読者の間で一致して高評価となりました. 一方で,技術的な新規性や関連研究への言及などについての指摘も概ね一致しており,条件つきでのロング採録,という判断となりました. 以下を採録条件とします. i 既存の自律移動ロボットの障害物検知研究をどう考えているのか,参照すべきものがあるのかないのか,それとも本研究はそれらの既存技術を使わない新しい障害物検知アルゴリズムなのか,について議論して新規性を明確にしてください. ii 査読者からの以下の指摘を反映してください. ---- 1. 「3.3 インタフェース」において、立体音響についての説明が不足していると感じました。本文中に「左側の骨伝導イヤホンからビープ音を鳴らすことで,」とありますが、左右のいずれかのみから音を鳴らすことをり立体音響と呼んでいるのでしょうか?立体音響というと、HRTFを用いて空間的な音の配置を再現したもののイメージが強いので、もしそうでなければその旨詳しく説明をお願いします。 2. 図6.のアンケート内容が英語で書かれていますが、英語で質問したという認識であっていますか?もし日本語で聞いたのであれば、こちらも日本語で記述してください。 ---- また,条件ではありませんが,各査読者のコメントを参考にして,可能な範囲でアップデートいただければです.
4: どちらかと言えば採録
3: 自身の専門分野とマッチしている
Liderによる周辺形状把握と画像認識による交差点検出,音声と振動による情報提示により視覚障害者の歩行支援を行うシステムの提案・評価がされています. 支援技術では,個々の要素技術の改良と共に,それらをどう組み合わせるかがユーザビリティに大きく影響するため,関連研究と比較しての優位性や新規性の議論は難しいと思いますが,実際に当事者による評価を得ていること,画像認識とLiderの役割分担により互いに補うシステムとなっていることなど手堅く実用に近い点が評価できると思います.
WISS2018で提案された視覚障害者支援システムは,同じWISSですので関連研究に挙げられるかもしれません. RGB-Dセンサをもつスマートフォンで周辺のポイントクラウド取得,歩行可能領域を検出して経路を通知する視覚障害者支援システムの当事者評価が行われています. https://www.wiss.org/WISS2018Proceedings/oral/04.pdf
5: 採録
2: やや専門からは外れる
事前の地図を必要とせずにスマートフォン1台で、視覚障害者の障害物回避と交差点の把握を支援するシステムであり、新規性・実用性の高さが評価できます。 評価実験では、定量評価・定性評価のどちらにおいてもポジティブな結果が出ていることから、本システムの有用性の高さを感じます。 屋内の通路の形状は様々であり、現状の提案システムでは支援が難しいケースがまだ多く存在すると考えます。今後、どのようにして支援範囲を広げるべきかについて議論ができればと思います。
4: どちらかと言えば採録
2: やや専門からは外れる
・新規性 本論文で提案されている,LiDAR等を用いた障害物検出および交差点検出は,自律移動ロボットにおける環境認識あるいは自律走行研究において研究が盛んである.よって,そこに特筆すべき新規性は見られない.また,空間オーディオによるフィードバックに関しても,特筆すべき新規性は見られない. 本論文の貢献は,従来自律移動ロボットの基盤技術として研究されている障害物検出および交差点検出を視覚障害者への実用的なツールとして消化した点にあると考える. ・有用性 実際の視覚障害者による被験者実験の結果が示すように,本システムは実際の視覚障害者にも評価されている点において有用性はあると考えられる.一方で,タスク完了時間が余計にかかっている点などは,実用性においての課題であると考える.例えば,進行方向を2秒前と4秒前のデータから推定するのは,実時間性という観点から問題がある. ・論文の記述 論文の記述に関しては明確である.ただし,関連研究には上に述べたような自律移動ロボットにおける研究を参照すべきである.
実際の視覚障害者のニーズを知り尽くした上での実用的な研究であること,また被験者も十分な数の視覚障害者によって構成されていることから,社会的貢献度の高い研究であると思われます. 一方で,学術的な観点から見た場合にはその貢献が不明確な部分があります.上でも述べたように,障害物検出や交差点検出は自律移動ロボットにおいて古くからなされている研究であり,また,近年では画像処理技術の高度化とともに優れた検出技術が開発されています.著者はご存知なのかもしれませんが,そうした研究についても論文では参照すべきで,もし本提案ならではの新技術があるのであれば,その新規性を主張して頂きたい.次に,こうした検出に基づく実時間ユーザフィードバックに新規性を主張するのであれば,どの点が優れているのかを明確にして欲しい.空間オーディオ,0.25s間隔のビープ音,などどこに新しいアイデアがあるのかがわかりませんでした.
5: 採録
2: やや専門からは外れる
本論文は、視覚障碍者向けの歩行支援システムとして、スマートフォンの LiDAR センサを用いて障害物および交差点を検出、立体音響等を用いてフィードバックを行うシステムを提案しています。また、実装したシステムを用いて全盲の視覚障碍者を対象にした評価実験を実施し、その効果を量的・質的に示しています。 提案システムにおいて、環境認識や経路計画等には既存の手法が用いられていますが、それらを組み合わせてスマートフォン単体で動作するシステムを実現している点は新規性があると考えます。 また、評価実験も適切に実施されており、そこで示されたシステムの有用性は信頼できるものであると考えます。 論文の記述の質も高く、分かりやすく説明されていると感じました。 上記より、本論文は「5: 採録」が妥当であると判断します。 ただし、以下の2点については確認・修正が必要であると考えます。 1. 「3.3 インタフェース」において、立体音響についての説明が不足していると感じました。本文中に「左側の骨伝導イヤホンからビープ音を鳴らすことで,」とありますが、左右のいずれかのみから音を鳴らすことをり立体音響と呼んでいるのでしょうか?立体音響というと、HRTFを用いて空間的な音の配置を再現したもののイメージが強いので、もしそうでなければその旨詳しく説明をお願いします。 2. 図6.のアンケート内容が英語で書かれていますが、英語で質問したという認識であっていますか?もし日本語で聞いたのであれば、こちらも日本語で記述してください。
同様の目的で、白杖にセンサ等を取り付けデバイス化するアプローチの研究が色々やられているかと思います。そのようなアプローチも実現可能性は高いと考えられ、本研究の提案手法の競合相手となる気がしますので、関連研究で取り上げると良いかと思います。 (ページ制限的に今回の原稿で対応するのは難しいと思いますので、今後に向けた参考意見と捉えていただければと思います。)
Liderによる周辺形状把握と画像認識による交差点検出,音声と振動による情報提示により視覚障害者の歩行支援を行うシステムの提案・評価がされています.事前の地図を必要とせずにスマートフォン1台で,障害物回避と交差点の把握を支援するシステムであり,視覚障害者の実際のニーズに合致した実用的な研究であること,また被験者も十分な数の視覚障害者によって構成されていることから,社会的貢献度の高い研究です.