査読者の評価は,3(メタ),4,5,5となっています. UIST2020にフルペーパーとして採録されている論文でもあり,全ての査読者が研究の価値は新規性/有用性ともに十分高いと評価しています. その一方で,複数の査読者が論文の記述の問題を指摘しており,論文自体の品質は(おそらくUIST論文からの記述の圧縮と日本語化の影響で)相当低くなっています. こうした論文の記述の質の問題や,既発表論文であり内容がコミュニティで既に認知されていることを勘案して,ショート採録として判定します. なお,本質的な問題ではないので採録条件は付けませんが,各査読者が論文の記述上の問題を多数指摘しておりますので,カメラレディまでにできるだけ改善頂けることを期待します.
3: どちらかと言えば不採録
2: やや専門からは外れる
本論文はUIST2020のFullPaperでも発表されている論文であり, デモビデオや5章の製作事例からも優れたシステムであることが伺えます. その一方,おそらく論文を大幅に圧縮したことと英語⇒日本語の翻訳に 起因する問題等で論文の可読性が低く,このまま採録するのは難しい ように思います. 以下,気になった点を述べます. ◆論文全体の構成 - 3.2章「フィードバック」で述べられている8つの性能指標について,指標自体の説明をせずにシステム側のフィードバック提示だけを述べられているため,大変理解しにくいです. 4.2章の「性能指標」の説明の一部をマージするなどして,どのような指標 に対しうるフィードバックなのか明確になるようにしてください. また,図3中の用語を3.2章では日本語にされていますが,「市松模様」「摺動性」は意味が分かりにくいです. 市松模様は,平面的な繰り返しパターンを想起させます.(論文独自の意味で使うなら定義したほうが良い). 摺動性は,辞書的な意味だと「滑りやすさ」のような意味になると思いますが,軸の向きの話をしているように思えるので,「スライド軸」のような用語の方が良いのでは? あるいは,図との対応付けも容易になるので,(a)~(h)の用語は英語表記で統一されてもよいかもしれません. ◆3.1章 - 「ボクセル解像度」という用語は唐突で一読しただけでは理解が困難です.図2のresolutionを見るとジョイントの凹凸部の分割数をこの名称で定義されているのだと思いますが,5章でも「解像度」が出てくるので最初に用語定義をされた方が良いと思います. -「しかし,5.6本の木材を接続するためのソリューションがほとんどないため,本システムは4本以下の木材を接続するために最も適している.」 ⇒一般的な3軸CNCでの切削は難しいということなのかと思いますが,具体的に記載して頂くか,前の文章と合わせて「理論的には6本まで対応可能だが,実際の加工場面を考慮すると,4本以下の木材の接続に適している.」のようにされた方が分かりやすいと思います. - 図の参照が一部なくなっていたり,ずれています. 3.3章の図6⇒存在しない? 4.1章の図7a 図7b⇒おそらく図4a, b ◆4章 - 4.1加工可能性 4.2 性能指標は,実装の章題としてみると何が議論されるのか分かりにくいです.4章冒頭の説明に倣うと,「(製造のための)幾何学的制約」「機能とデータ構造」のような対応になるのでしょうか?(まだずれている気もするので,共著者と相談してください) - 図4のcaptionは加工可能性ではなく,「3軸CNCを用いた際の加工の制約」等の方が適切では? - (詳細は「経路計画」の項を参照)⇒経路計画という章は存在しないようです. - 方向制約(図7)として,各木材が単一の方向のみから加工されるという制限を導入しているつまり,加工可能な形状は,高さフィールドで表現できるものに限られる. ⇒高さフィールドとは何でしょうか?一つ前の文章の意味は十分理解できるので,重要でないなら削除された方が良いかもしれません. -(スタックのように),製作軸とスライド軸は... ⇒ スタックの意味がよくわからないので,削除された方が良いと思います.(データ構造ではないですよね...?)製作軸は,「切削軸」の方が分かりやすいように思います. - 連動性の定義は,組み立てられた状態で1つのピースだけが可動することである.したがって,Tsugiteシステムにおける有効なジョイントは,それだけでは決して連動しない(2つの可動ピースを持つため). ⇒ 「連動性」とは何でしょうか?初見で出てくる用語で唐突な印象です.言い換え/削除等適切に対応してください. - その方向で異なるIDのインスタンスの後に,同じIDのインスタンスがあるかどうかを確認する ⇒インスタンスという用語が唐突で意味が分かりにくいです.(木材IDもやや唐突ですが...)システムで共通で利用する用語だとすると,実装の冒頭等で整理された方が良いと思います. - 耐久性 ⇒耐久性の評価指標は図9を見るとわかるのですが,実際にシステムではどのように対応するのかも記載された方が良いと思います.警告フィードバックを出して,判断はユーザに任せるということでしょうか?(3.2章に統合されるなら特に変更は必要ないかもしれません) - 有効な接合部をランキングする ⇒意味が分かりません.ランキングとはどういう処理でしょうか? - 図 11. 接触面積と摩擦面積. ⇒キャプションが間違っていると思われます. - 「市松模様」 ⇒4.1章では「市松模様を全体的に禁止した」と書いてありますが,この章を見ると市松模様の機能は残っているということでしょうか?矛盾しているように見えるので,説明を補足してください. ※4.2章を3.2章と完全に統合される場合は変更は必要ないかもしれません. ◇以下は細かい指摘です◇ ◆5章 - 寸法の記述にcmとmmが混在しているので,mmに統一されてはどうでしょうか? - 可能であれば,出力した継手の強度や耐久性等をもう少し定量的に記述いただけるとよいと思いました. - 日本語としてあまり一般的な用語ではない用語が十分な補足無しに使われている例が散見されます.共著者等の日本語ネイティブに確認頂くことをお勧めします. 「インターロッキング」 「リコンガブルプロパティー」 「ボイドセル」 「ボイド領域」 「ティンバージョイント」 等 - 一部の章の句読点が「、」「。」となり,混在しています. 4.1章,4.3章 - 2章 「これらのシステムが容易にしている範囲でのジョイント作成では,ジョイントの形状は通常,様々な幾何学的条件にパラメトリックに適応する1つまたは複数の標準ジョイント形状に基づいている」 ⇒上手く直せませんでしたが,やや分かりにくい文章だと思いました.共著者に確認頂くとよいと思います.
5: 採録
2: やや専門からは外れる
提案手法には新規性,有用性のいずれも十分にあることから,採録と判断しました.ただし,論文の記述について一部修正が必要です.以下に詳細を記述します. ・新規性 継手を対象としたファブリケーション手法には新規性が認められます. なお,論文にも記載されているように,本論文は「ACM UIST2020で発表済みの論文をまとめたものである[23]」.[23]からの新規性は特に見られないが,WISSでは「国際学会・国際ジャーナル等で発表済み・あるいは投稿中のものでも投稿可」としているため,[23]を理由に新規性が欠如しているとは考えません. ・有用性 様々な検討や実装がなされており,かつ多数の実装例も提示されています.高い有用性が示されていると考えます. ・論文の記述の質 ところどころで,不適切な表記が使用されています.例えば, 3ページ左「FEA(ナイト・エレメント・アナリシス)」 3ページ左「2つの基準を満たせば」どの2つの基準なのか示されていない. 3ページ右「内側の角をフライスビットと平行に削ることが不可能である(図7a)」少なくとも,査読者に意味が理解できなかった. 4ページ左「二つ目の内側の角の制約(図4a)は,市松模様が問題となっており,一見分かり難い」唐突に市松模様が登場しており,市松模様が問題なのか,角の制約が問題なのかわかりづらい. 他にも何点かありますが,再投稿前までに十分な推敲を行ってください.
役に立つサジェスチョンになるかどうかは不明ですが,査読者は以下のようなことを感じました. この手法を用いることで,従来職人が作ってきた以外の継手パターンを創造できないか? 強度計算と組み合わせることはできないか?寄木細工への応用はできないか? WISSの場での議論が本研究の発展に貢献することを期待しています.
■新規性
フレーム構造用の木材ジョイントを設計・製作するためのインタラクティブなシステム「Tsugite」が提案されています。論文冒頭にも示されている本論分の内容はACM UIST2020で発表済み[23]ですが、システムの完成度は高いので、WISSにおいて発表され、議論を深める価値は高いように思われます。
■有用性・正確性
システム自体の有用性は高いと考えられます。また、論文の記述の正確性にも問題無いように思われます。
■論文自体の記述の質
推敲不足と思われる箇所が幾らかあります。また論文の体裁が崩れている箇所があります。以下に気付いた点を挙げます。 - 「詳細は「経路計画」の項を参照」とありますが、「経路計画」という項が見当たりません。 - 段落の字下げされていな箇所があります。また、a), b), ... という形式の箇条書きの字下げがなされている箇所とそうで無い箇所があります。 - 表記揺れ(全角数字と半角数字)があります。
木造建築において複数の部材を組み合わせる「継手」技法について,インタラクティブなシミュレーションとファブリケーションを可能にするシステムを提案/実装し,製作事例を紹介している.UIST2020にフルペーパーとして採録されている論文でもあり,全ての査読者が新規性/有用性ともに高く評価した.一方,投稿時の原稿は記述の質が低く,また既発表論文であり内容が既に認知されていることを勘案して,ショート採録と判定した.