査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

着眼点および適切なシステム提案を評価している点は査読者3名で一致しており、ショート採録となりました。実験で期待されたような結果が出なかったことに対しては発表の場で議論していきましょう。

[メタ] 査読時のレビューサマリ

本論文フィールドホッケーの基本動作、プッシュの習熟のための練習支援デバイスを提案している。
デバイスはスティックに取り付けた7つのセンサでボールとの接触を検知し、ボールの動きを視覚、聴覚それぞれでフィードバックする。このデバイスを用い、4名の被験者に実験を行い、視覚フィードバックがボールの移動を有意に増加させるという結果を得た。聴覚フィードバックに関しては期待した効果が確認できていない。


プッシュ動作練習支援の提案及び、手法について細かい疑問点はあるものの大きなものはなく妥当と思えます。一方で実験結果に関しては予想に反する点が多く、なぜ聴覚フィードバックの効果が出なかったという点に関して査読者3名とも疑問を持っています。デバイスが不十分、被験者に対するコーチングの者dないなど様々なことが考えられますが、そこを掘り下げていく必要を感じます。

ショート採録とするには上記、不十分と判断しましたが、WISSはワークショップの場でありこうしたデバイスをどのように実験、運用するのかなど多くの研究に共通する有益な議論をする題材として良いのではないかと考え、議論枠採用を推しています。

[メタ] その他コメント

総合点

5: ショート採録が妥当

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

・新規性
ホッケーのプッシュ動作に特化しており、新規性はあると思えます。

・有用性
システムの提案に至る背景からよく説明されており、提案システムも必要十分と感じられ、有用性があると判断できます。

・記述の質
ホッケーの基本動作解説から経験者が少ないという背景まで動機となる部分から手法の提案、実験、検証までわかりやすくまとまっています。

この研究をよくするためのコメント

提案手法は十分に有用であると思えましたが、実験で思うような結果が出なかったことに対する考察が不足しているように思えます、追加実験などを行いそこまで言及できるとより良い研究になると思えます。
雑感ですがハードウェアやシステムの問題ではなく、使用してもらう際のコーチングの手法などによってより良い結果が出るのではないかと感じました。

また、こういった誰もが知るような競技ではない場合、ビデオ投稿はあった方が適切な評価を受けやすくなります。次回はビデオの投稿も検討してください。

実際にフィールドホッケーのコーチングができるような方からこのデバイスを用いたコーチングの手法の提案を受けてみるなどより実践的な方向もあり得るのではないしょうか。


査読者2

総合点

5: ショート採録が妥当

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

本論文は、フィールドホッケーの中でも「プッシュ練習」に着目をして支援技術を提案・実装している。

具体的には、スティック打面上のボールの移動経路を可視化、可聴化して、支援できるか検討を行った。
提案手法を実装したシステムでの評価実験の結果、視覚フィードバック手法が有意にスティック上のボールの移動を増加させることを確認することができた。


フィールドホッケーの「プッシュ練習」に特化した支援技術の提案としては新しい。
可視化と可聴化を提案しているうち、可視化については使える可能性がある。一方でまだ被験者実験も少なく、本当に有用かどうか判断するには難しい。
特にフィードバックありのときには効果は確認できているが、フィードバックなしにしたときに効果は戻ってしまっており、支援技術として、これを使って上達できるか、といったことに対する有用性はまだ判断できない。

論文としては、以下に述べるが、関連研究が可聴化については調査が薄く、また記載に関しても明確でない、フィールドホッケーの素人にはわかりづらい点がある。

これらのことを総合してショートと判断した。

この研究をよくするためのコメント

関連研究ですが、NTT研究所柏野氏らが行っている、センシング技術によるスポーツ上達支援も関連すると思われます。
http://sports-brain.ilab.ntt.co.jp/

また、可視化の研究については議論されておりますが、可聴化に関する研究も盛り込まれると良いと思います。


3.2節(p.3 右)
「今回は閾値を0から255まであるセンサ値のうちの2とした」とありますが、なぜ2としたのでしょうか?
経験上でしょうか?何度かセンシングしての結果でしょうか?
理由があるとより明確と思います。


聴覚フィードバック手法(p.4 左)
C4やC5といった表記は音楽から遠い方にはなじみがないと思いますので、鍵盤などの図があると良いのではないでしょうか?もしくは脚注に注釈を追加するなど。

4.2節
評価実験にといて、右利き、左利きなどの利き手は考慮されているのでしょうか?
もしされているのであればその旨を記載、されていないのであれば、しなくていい理由などあると良いかと思います。

図7の(i), (ii)をみると、
(i)では4,5,6,7付近にあたっていて、
(ii)では、1,2,3,4,あたりにあたっている、
とそもそもの当たる位置が異なるように見えますが、これに関しての議論があると良いと思います。

フィードバックがあることで、1~4に当たるべきなものがきちんとあたっている、等。

「スティック先端(センサ番号4,5,6番)」を移動経路として通過すればよいのか、最初にそこにあたる必要があるのか、がわかりません。


評価実験としては、視覚実験、聴覚実験をそれぞれ別々で行っていると思いますが、あわせて行うことはやらないのでしょうか?

初心者にはそのほか、姿勢や目線など、他の要素も関係しそうですが、そのあたりが議論に加わるとより良いと思います。


その他:

・2.1節「増田らは、~」の段落の前に空行があります。

・図2. 図3のキャプションが図から離れているので(図2のキャプションは図3のほうが近い)整えると読みやすいと思います。


査読者3

総合点

4: ショート採録に反対しない

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

ホッケーのスティックにセンサを付与することでスティックの状況をリアルタイムにフィードバックする仕組みの提案と評価をされています.
システム自体には(音によるフィードバックを含め)新規性があるものと考えます.

しかし,論文の主眼が,1) 圧力センサを伴うシステムの提案 なのか,2) システムを用いたフィードバックの性能評価 なのかがはっきりしないところが悩ましく,そのいずれであっても下記の観点での記述が不足していると考えられます:
1) システムの提案であったとすると,このシステムがスティックの扱いそのものにどの程度影響を与えるかが気になります.センサを付与している以上,スティックの使用感などに違和感が出てしまうのではないかと思われるのですが,その点が不明です.また,今回は実験程度の利用でしたが,実利用を考えた際のシステムの可用性についても触れてあることが望ましいように思います.実験システムですので対故障性は問わないにせよ,例えば(視覚に限りますが)画面を見に行くのにかかる時間や手間,システムを加えたことによる重さやスティックの太さなどの変化,(きっとフィールドで使うときはワイヤレスだと思われますので)充電の必要性など,システムを運用するうえでの問題が議論されていることが期待されます.
2) フィードバックの性能評価としては,これらのセンサがそもそも学習に有用でないという結論にも見えますし(特に被験者D),聴覚フィードバックが不適切なようにも見えます.そのあたりの考察,特に,なぜ視覚のほうが効果が高かったのか,聴覚ではそれがなぜダメか,(視覚と比較して)聴覚で特に期待された効果は何か,それが発揮できなかった理由はなにか,あたりの考察がないと,この結果だけでは今後の設計に役立つ情報があまり含まれていないように思われます.実験期間の短さなどもあるので難しいところではありますが,これらの深い考察は評価をするという観点で重要であると考えます.

この研究をよくするためのコメント

有用なシステムである可能性は高いのですが,その説得力が通り一遍の評価で終わってしまっているのが残念です.ぜひ評価の観点・ポイントを絞ってより本手法の効果がわかるような評価を実施されることを期待します.