査読者全員が、方向キーの1回の押下の移動量を動的に変化させる本手法の新規性と、平均押下数の減少などに基づく有用性を認めている。
一方、著者も書かれているように、ユーザビリティ、ユーザエクスペリエンスの評価が必要だという意見も一致した。今後の評価実験の実施が望まれる。
6: ショート採録を強く推す
2: やや専門からは外れる
ベイズ実験計画法を用い、方向キーによる文字入力数を減少させる手法の提案である。新規性があり、著者の述べられているようにユーザ側の習熟による速度向上の伸びしろがない場面でのアルゴリズムによる支援等、有用である。
論文の記述における質と正確性は問題がなく、1文字当たりの押下回数が平均的に減少していることから有用性も確認されている。ただし、著者も書かれているように非直感的となりうる可能性がある本操作が、ユーザエクスペリエンス改善
につながるかを確認することが重要だと感じたため、6と判定した。押下回数の現象だけでなく、押しすぎてしまう(目的の文字を通り過ぎてしまう)ようなエラーの傾向などに興味がある。
4: ショート採録に反対しない
2: やや専門からは外れる
カーソルキーでQWERTYキーボードのキーを選択する場面で,1回のカーソル押下で移動する量を尤度に従って制御するというのは新しいように思います.
5節では理論上操作量が既存手法と比較して減っていると述べており,「理論上」は有効であるように思います.
一方で,カーソル操作でQWERTYキーボードの文字入力をする場面では,通常ユーザは目的のキー(1文字)を入力するときに現在地からの移動経路を想像して,カーソルを見ずに連打するように思います.提案手法では移動量が2キーや3キーとなっても逆方向に移動すれば目的のキーを入力できるというスタンスかと思いますが,ユーザを介した実験を行うと理論とは異なるように思います.キー操作量は減るかもしれませんが,操作時間で勝てるのかは疑問に思いますので,ぜひ簡単でもよいのでユーザに使ってもらった時の操作時間の計測結果を見てみたいと思います.
4: ショート採録に反対しない
1: 専門外である
カーソルジャンプ先の最適化のためにベイズ情報利得を活用している点で興味深く,一定の新規性が認められます.
意図した文字の場所までキーを押す回数を減らすことに価値がある,と述べられているが,目的地にたどり着くまでの時間や,正確さなど様々などの要因は今回の論文では考慮していないのかが疑問に思いました.
論文中で述べられているように,カーソル移動に遅延がある場合や,身体機能に制限がある人々への支援としての利用は納得できる一方で,そういった状況下でも早く正確に文字を入力する需要はあるように思えます.
(目的の箇所に向けてキーを連打する状況は大いに想像できます)
また,システムの動画を見る限り, 1文字を入力するたびにスタート地点に必ず戻される仕様となっているようですが,これは「より少ない回数でのカーソル移動」を目的としたシステムには適さないように感じられました.
例えば,動画のWISSの文字入力のように同じ文字を連続して入力する場合,初期位置に戻さずに,入力直後の位置から次の文字選択が始まれば移動距離ゼロで入力ができるはずです.
アルファベットでの文字入力の場合,同一の文字を連続して入力する機会は少なくないと思うのですが,実際にユーザがシステムを活用した際,キー入力回数の観点でも本当に削減されるのかについても疑問が残ります.
著者らも課題点として言及していますが,やはりユーザビリティに関する評価はぜひ見たかったと思いました.
ワークショップとしては十分な内容であり、ベイズ実験計画法を用いたインタラクション技術は様々な場面での応用可能性につながることから、WISSで発表いただき、内容を共有することは有意義である。ショート採録を推す。