査読者全員が新規性を認めており,とても興味深い内容でした.
一方で,不明瞭な点や表記ミスが多く見受けられます.
以下の修正を採録の条件とします.
1) 1辺に対する誤差の算出についてついての補足.
必要があれば修正をお願いします.
2) 表記ミス等の修正
一部は査読コメント内で指摘されています.十分に推敲を行ってください.
3) 磁気を用いたスマートフォンの位置推定の関連研究の追加,及び本論文の貢献の加筆.
7: ロング採録に反対しない
3: 自身の専門分野とマッチしている
本論文は,スマートフォンに内蔵された磁気センサを活用し,複数の磁石を配置した 2次元平面上での位置を推定する手法を提案しています.磁気センサでのトラッキングのため,向きの異なる複数の磁石の工夫した配置を提案しており,一定の新規性があります.一方で論文中では,不明瞭な点が多く見受けられます.
・本研究の貢献について
デバイス周辺での磁石を活用したインタラクションについての関連研究を中心に挙げられていますが,磁気センサを用いたスマートフォンの位置推定に関する研究が引用されておらず,本論文の貢献ポイントが明確でありません.例えば以下のような論文があります.
[1] Kosuke Watanabe, Kei Hiroi, Takeshi Kamiyama, Hiroyuki Sano, Masakatsu Tsukamoto, Masaji Katagiri, Daizo Ikeda, Katsuhiko Kaji, and Nobuo Kawaguchi. A Smartphone Short-Range Path Estimation with Hyperbolic Function for Spinning Magnet Marker. Journal of Information Process, Vol. 27, pp.10–24, (2019).
[2] Kalyan Pathapati Subbu, Brandon Gozick, and Ram Dantu. LocateMe: Magnetic-fields-based indoor localization using smartphones. ACM Transactions on Intelligent Systems and Technology, Vol.4, No.4, Article No. 73, (2013).
[3] Hongwei Xie, Tao Gu, Xianping Tao, Haibo Ye, and Jian Lv. MaLoc: a practical magnetic fingerprinting approach to indoor localization using smartphones. In Proceedings of Ubicomp’14, pp. 243–253, (2014).
・パターンb, cの違いについて,cは「一様に地場が強くトラッキング精度が安定しやすい特徴がある」と述べられていますが,評価実験の結果を見る限り cの方が誤差が大きく精度が低いように見えます.これは精度が安定していると言えるのでしょうか.
・実験結果にて,1辺に対する誤差はこれらはどの様に算出されたものなのでしょうか.
直前の誤差平均 11.1mm, 27,57mmと格子全体の領域 120mm, 240mmから計算しても,8%, 10%という値にはならないかと思います.
・パターンb,cの繰返し単位 12cm, 11.5cmや,評価実験における測定の間隔を2cm, 4cmなどの数値に設定した根拠は何でしょうか.
予め予備調査を行っており,本論文では決定したベストパラメータから精度に関する評価を行っているという位置づけなのでしょうか.
・パターンcについて,四隅の部分は地場が弱いため測定から除外したとありますが,
この四隅に磁石を置き,トラッキング可能な領域を拡張することはできなかったのでしょうか.
何らかの不都合があり,円形のパターンにしているのであれば,その根拠が知りたいです.
・応用例について,ユーザが使用する際,スマートフォンのどの位置に当たる文章が拡大される想定なのでしょうか.
動画を見る限りセンサ(スマートフォン左上)のやや上辺りのが拡大されている様に見えますが,スマートフォンから見てどの箇所が拡大されるのかを何かしらで可視化できると,ユーザに親切かもしれません.
・全体的に表記ミスが多いので,修正をお願いします.
-5章 4段落目 真上にに → 真上に
-6章 2段落目 提示することができる6.→ できる[6]?
-参考文献の引用箇所が文末の句読点の前にあるか外にあるかがバラバラです
-繰り返し領域,繰り返しブロックなどの表記ゆれがあります
5: ショート採録が妥当
2: やや専門からは外れる
永久磁石の空間(平面)配置と、スマートフォンの地磁気センサとの組み合わせで相対位置を取得するという、ありそうでなかった組み合わせ方法を提案しているという印象です。興味深く読ませていただきました。
ただ本手法は、スマートフォンの姿勢が固定であるという前提を置かないと上手く行かないように思われます。この点は筆者自身もリミテーションの部分で指摘していますが、用途をかなり限ってしまうのではと感じました。筆者自身が述べている解決方法も「垂直な平面に対して使う(ことで加速度センサと併せてスマートフォンの姿勢を推定する)」というもので、やはり大きな制約になっていることは否めないかと思います。
また精度評価に関してパターンbでも11mmの平均誤差ということで、スマートフォンを手に持って使うという状況ではかなり大きな誤差のように思いました。
7: ロング採録に反対しない
2: やや専門からは外れる
スマートフォンと永久磁石のみで二次元トラッキングを行う手法を提案しています。
スマートフォン内蔵の磁気センサを使って指等に取り付けた磁石の動きをトラッキングする手法は多くありますが、スマートフォン側を動かすことで2次元平面上における絶対位置を検出でき、またそれを安価かつ電源不要で実現できる点に、新規性・有用性があると思います。論文も丁寧に分かりやすく書かれています。
現時点ではまだ狭い範囲の検出に留まっていますが、繰り返しブロックの越境判定を実現できれば、より汎用性が高くなり、既存手法に比べてより強みが出ると思いますので期待しています。
WISSでの発表に十分な内容であると判断し、本判定といたしました。
機種による磁気センサの配置や感度の違いが、センシング精度に与える影響は無いのでしょうか?一つの機種で問題なく使えても、他の機種では磁力が強すぎて壊れてしまう、もしくは、弱すぎて位置検出ができないような事が起こらないのか、疑問でした。
複数の磁石を平面上に並べ,安価・バッテリレスで 2次元のトラッキングを実現するという興味深い手法を提案しており,査読者全員が新規性を認めています.
WISSでの発表としてもふさわしい内容であると判断したため,ロング採択と判定しました.
一方,論文中では一部不明瞭な箇所があることから,それらの修正を条件とした.