安価なアナログ回路のみで複数種類のブロックの認識、および積み重ねに段数、積み重ね順の識別といった提案は3名の査読者が新規性があると判断している。
実装もしっかり作られており、論文としても、技術説明が丁寧に執筆されており、読みやすい。
一方で、コスト議論が中途半端である面が否めない。受動部品は5円でできるがそのほかのパーツについては本当に安価で製作可能であるかさらなる検討が必要である。
また、インタラクションの議論に乏しく、有用性が弱いとの判断となった。
インタラクションを扱う分野の研究としては、著者としてその実装方式が生み出す可能性を議論してほしい。20年前のようなブロックモデリングの事例しか紹介されていないことから議論が乏しいとの判断となった。
その結果、ショート採録となりました。
5: ショート採録が妥当
2: やや専門からは外れる
本論文はブロック形状による3次元モデリングにおいて、安価なアナログ回路のみを内蔵し、積み重ねられたブロックの底面において測定される電圧を用いて、積み重ね段数や種類、積み重ね順を識別する機構を提案している。
実験の結果、30段の積み重ねを識別できること、8種類のブロックを識別することに成功している。
安価なアナログ回路のみで識別するといった新規性は評価できる。論文としても明確で読みやすい。
一方で、インタラクティブブロックとしての有用性はこの論文の内容からは判断ができなかった。
このことからショート採録が妥当と判断する。
回路価格5円ととても安価で制作でき、1段であれば100種類、20段であれば25種類のブロック識別が可能との見込みとのことであり、これが実現できたらいろいろな展開が期待できる。
発表の際には、ぜひ、実現できた際にはどのような使われ方が想定できるか、これまでのブロックモデリングではできなかったこういう課題を解決できる、等の例が見てみたい。
「インタラクティブブロック」とのことですので、インタラクティブにセンシングした実例があるとより良くなると思います。
ブロックに入れる回路は1個5円とのことであるが、ブロックをセンシングする側の回路も安価で実現できるのでしょうか?
「理論的には識別するブロックの個数に制限がない」と2.1節には書かれていますが、6章議論には「1段であれば100種類、20段であれば25種類のブロック識別が可能」とのことで、この見込みの計算式などがあれば具体的に知りたいです。
この抵抗値や識別のための電圧などは立方体形状だからうまくいく仕組みでしょうか?
100種類に増やした際には、色だけで識別するのは困難になるほど近い色も出てくると思いますが、形状を変化させたとき(例えば、通常のレゴブロックのような長方形の種類がたくさんあったり、テトリスのような形状であったり)にもうまくいくのでしょうか?
「今後ブロック自体を透明にしたい」とのことですが、透明にすることの利点は何でしょうか? STEM教育目的?(回路への興味?)
3: どちらかと言えば不採録
3: 自身の専門分野とマッチしている
インタラクティブなブロックシステムは多数提案されていますが,提案手法は非常に安価な受動部品だけで,複数種類のブロックを認識できるという点で実装面では一定の新規性はあるのだと思います.技術的な説明も丁寧で,実装もしっかり作られており好感が持てます.
ただその一方で,以下のように複数の課題があります.
「応用例が非常に古典的&提案の特徴が生かされていない.」
提案されている応用はブロックを用いた3Dモデリングという非常に古典的なもので,多種類のブロックを認識できる特徴もほぼ生かされていないように思います(ブロックの見た目の色が変わるだけ).それ以外の用途はほぼ議論もされておらず,インタラクション的な新規性や拡張性がほとんど感じられません.(一番最後に出てくる,抵抗型センサとして使うことでインタラクティブにするという方向性はよいと思いますが,ブロックの種類認識と共存が難しそうですし,結局ブロックモデリングの枠を出ないように思います.)
少なくとも,ブロックの形状を多様にしていろいろな形状を簡単にモデリングできる(=3Dプリントできる),超大量のブロックを使って複雑形状がモデリングできる,といった既存システムでは多少なり難しい事例の紹介や議論は必要ではないかと思います.
「コストの議論が中途半端」
ブロックのコストが安い点をアピールされているのですが,ベースの計測部には安定化電源やパルスジェネレータ・測定器が使われており,これが実装に必須なのか議論がありません.開発がしやすいように利用しているだけなのか,性能面で必須なのかは明記されるべきだと思います.また,リレーがベース接点の個数分いるというのもあまりスマートに思えないので,マルチプレクサの電圧降下がどれ位の制約を生むのか(例えば識別可能数がどの程度減るのか)も簡単に議論されるとよいと思います.
「インタラクションの議論に乏しい.」
実験や議論の内容がインタラクションやユーザビリティに関するものではなく,ほぼ電気回路的な検出精度に特化しているので,先ほどの応用例も含めて議論の広がりに欠けるような印象があります.(査読者個人としては電気系の話も興味がありますが...)
このような課題(特にインタラクション的な新規性に乏しい)と,丁寧な技術的な説明/実装を勘案して,「3 どちらかと言えば不採録」と判断しました.
5: ショート採録が妥当
3: 自身の専門分野とマッチしている
本論文では,安価に製作可能できるインタラクティブなブロックシステムを提案している.各ブロックには単純なパルス遅延回路が内蔵されており,積み重ねたブロックの位置と種類を識別することができる.
既存のインタラクティブなブロックシステムと比較し,単純で安価な方式でブロックの識別が行える点で新規性が認められる.
有用性の判断は難しい.既存システムに比べて安価で製作が可能となることは有用であると言えるが,既存システムで実現できていたブロック内のセンサの活用などが行えなくなってしまっている.提案手法に基づくシステムが,十分に有用なインタラクティブブロックシステムとなっていることを示してもらいたい.
正確性,記述の質については,特に大きな問題はないと考えられるが,何点かの疑問がある.
・抵抗の精度は慎重に扱っているが,コンデンサの容量精度についての記述が見当たらない
・インバータのしきい値は一定の値とはならないため,遅延時間の精度が保証されない
・製作費用が5円とあるが,あくまで基板上のパーツ代だけであり,基板やケーブル,コネクタ類,実装費用などが含まれていない.そのため,本当に安価に製作可能かどうかについてさらなる検討が必要
・サンプリング周波数2MHzを維持する場合,識別するための回路が高価になってしまう恐れがある
・シミュレーションと実測値の差が見られた原因を測定器にあると結論づけているが,これは測定器の入力インピーダンスが相対的に低いことを無視して不適切に計測を行っていることが原因なのではないか
・(遅延時間に幅が生じてしまうために)同じブロックが複数重なった場合に,正確に段数を読み取れるかどうか不確かである可能性があるが,これに関する記述がない
以上のことから,採録が妥当であるが,有用性が判定できないため「ショート採録が妥当」と判断した.
有用性をより強く主張することが望まれる.
どのような状況で,このブロックシステムが有用であるのかを示したり,6章で記述されているように,センサを組み込んだ実装を行うことを期待している.
安価なアナログ回路のみを内蔵したブロックの提案で、電圧測定で積み重ね段数や種類、積み重ね順を識別する機構を提案しており、新規性があると判断する。
一方で、インタラクティブブロックとしての有用性は判断できなかった。