関連研究や周辺領域の調査が不十分と感じました。
試着できずイメージがしにくい点はReviewID: 109が挙げた用にペットの種類によっては試着することは可能であり、より言及する必要があります。
猫の大きさや柄を変更でき、実際の猫のイメージに近づける工夫は評価できます。しかし、姿勢や移動時などの動物を扱った事による議論が不足した印象を受けました。
またReviewID: 106が指摘したように裁縫時のガイドが見当たらず、裁縫者の技術によっては作成が非常に困難では無いかと感じました。
改善点は残されていますが、査読者は一様に提案の着眼点や研究の重要性を評価しており、議論する価値はあると判断し今回の評価になりました。
5: ショート採録が妥当
1: 専門外である
システムが作り込まれており、ケープのみでなく、猫の大きさや種類等が変更でき、実際に使用できるイメージが持ちやすいことが評価できます。
しかし、従来の関連研究との差分を明記する必要があり新規性が不明確な印象です。
動物と人間の衣服モデルを作る場合、どのような違いがあり新しさ技術的課題があったのかなど、引用研究からさらにこの研究の立ち位置を明確にする必要があると感じています。
また、ケープに対する説明を追記する必要があると思います。「試着できずイメージと異なる」点を課題に挙げられていましたが、販売されているケープの機能や外観がどれくらいカバーできているかが明確ではなく、作成したケープの完成度のイメージがわかりにくい印象です。
改善点が挙げられますが、着眼点や今後の展望や未来ビジョンに記述されていた項目からこの研究の重要性を感じたためこの評価になりました。
縫製時間の改善は記述されている通り行うことで、より良い研究になると思います。また、全て設計してからではなく、リボンや特殊細工単位での難易度や時間の変化を出すことが重要だと思われます。
また今後の展望で記述されていた「AR 機能 を導入することでペットに完成した衣服を着させた 時とデザイン作成時のイメージの差異を減らす支援 も行いたい. 」が実装されることで、より具体的な使用イメージを持たせることができ、期待できることからこのような評価になりました。
ペットだけではなく、ロボットなどの服に応用すること発展は非常に有益だと感じました。現在コミュニケーションロボットの服は高価なものが多く、手作りをしようとしても関節の自由度や熱を考慮しなければいかず、裁縫以外の技術だけではなく工学的な知識も必要になると思っています。今後もロボットもペットや家族として扱われるケースが出ると思われるため、より重要になってくる研究だと感じました。
3: どちらかと言えば不採録
2: やや専門からは外れる
・新規性
ペット服という着眼点は新しいが、シミュレーションとしては限定的であり、過去の研究に対して主張できる点が乏しく思えます。インタフェースとしてもペット服ならではの考察などがあると良かったかもしれません。
・有用性
猫向けケープのスタンダードな型紙をベースにデザインができるという点では有用性がありますが、「ペットの服をデザインする」という大きな題目に対して実現していることは少なく、タイトルなどに関してもう少し見直した方が良いと感じます。「初心者のための猫用ケープ自作支援」だと納得度合いが高くなります。
・記述の質
論文そのものはわかりやすく書かれていますが、先行研究に対する言及が足りないように思えます。ペットの服のデザインに関する研究は少ないかもしれませんが、人間の服や3Dモデルでの服のシミュレーションに関しては多くの研究がありますので引用しておきましょう。また、肝心のペット服に対する調査と考察が足りておらず、ペットを飼っていない読み手、ペットに服を着せない読み手に対する説得力が乏しいと感じます。
「1.はじめに」で「ペット服は人間の衣服と違い試着ができない」とありますが、少なくとも犬の服に関しては多くのお店で試着ができます。例えばIllio、Dog Deptなどでは試着できます。通販でも着せた後に合わなかったら返品可という店舗もありますので、調査が不足していると感じます。
対象となる服がケープ型に限られていますが、市販のペット服を見る限り、ケープ型はどちらかといえば特殊な部類に思えます。
ペット服の難しさは
・体格にあったデザイン
・着せやすさ、脱がせやすさ
・着用者の快適さ、動きやすさ
などがあり、確かに自作が難しいということは想像できますが、そこに触れた上でまず初心者が入るものとしてケープ服を提案するというプロセスが必要と考えます。ケープの場合、既存の服に重ね着させられるなどメリットもありますね。
ソフトウェアに関してはケープ服を作成する際にどういった問題が発生するのかなどの記述がなく、利便性に関して想像しにくいですが、完成図を想像しながらデザインできるという点はとても良くできていると思います。
長毛、短毛など条件を変えられるようにした配慮は良いと思います。ソフトウェアの方ではそこを変えるとどうケープが変わるのかわかるようにしておくとなお良いですね。
今後の展望として実際のペットにARでの表示などなかなか難易度高いとは思いますが、体格を合わせたモデルを実在のペットの横に表示などやりようはあると思いますので期待しています。
5: ショート採録が妥当
3: 自身の専門分野とマッチしている
本研究は、ペットの衣服(ケープ)の作成を支援するためのインターフェースを紹介しているものである。また、インターフェースの機能や関連研究調査で、今後追加していくべき点が複数あると思いましたので、「ショート採録」が適切であると判断しました。
<提案されている内容の新規性>
近年需要のある動物の衣服を対象としている点で一定の新規性がありますが、形状処理技術自体は、テンプレート形状のパラメータ調整を行うものにすぎない等、技術的な新規性は少ない印象でした。特に気になったのは以下の点です。
1. ケープの形状編集について
一つのテンプレートモデルの 「首回りの大きさ」と「丈の長さ」「毛の長さ」の三種類のパラメータを調整することで形状編集を行っています。(ケープをつけさせたい)実際の猫の首回り等を図ることでパラメータ値を決定することはできますが、インターフェース画面に表示する猫の「体形や姿勢」と実際の猫が異なる場合、完成図を予想しづらいのではないかと思いました(例:図12と13の猫とシステム中の猫の姿はかなり異なるので)。
なので、ユーザが指定したパラメータ値や姿勢情報を用いて、インターフェース上の猫モデルの姿勢を考慮したうえで、形状変形させる必要があると思います。しかし、現状はそれらの機能はない + 3Dモデル処理に関連する論文が引用されていないので、今後参考文献の調査をしてもらいたいと思います。
例:
- Brouet et al. "Design preserving garment transfer" ACM Transactions on Graphics (SIGGRAPH 2012). https://dl.acm.org/doi/10.1145/2185520.2185532
2. 型紙の可視化機能について
生成結果(型紙)を黒線で表示していますが、「型紙のどこを縫うのか」等が可視化されていないように思いました。なので、ユーザの設計の際、迷うのでは。。。?と思う点がありました。例えば、縫う位置を黒以外の色(例:灰色)で可視化したほうがわかりやすいと思います。また、(インターフェース上では色の変更はできますが)切りっぱなしの布の「ふち」を型紙生成や裁縫の際にどのように処理すればいいのか(例:折り返して縫う等)についても、記述がないように思います。
もし型紙生成で明確な処理がないなら、インターフェースの機能として不十分だと思います。なので、明確な記述 or 機能の追加をお願いしたいと思います。
<有用性>
上記のような技術的に不足している点があるので、ロバストな手法なのかを判断することは難しい印象でした。今の段階では、まだ製作者、型紙の意味を最初から知っている人なら制作できる。。。印象です。(スキル別に分けた上で)複数の人に対する被験者実験を行ってはじめて有用性を示せると思います
<論文自体の記述の質>
原稿自体は内容が明確であるため、(比較的)わかりやすい印象でした。
<コメント>
1. 複雑な形状について
a) このシステムでは、ケープの素材の固さについては考慮できないため、実際に猫が着た際の「皺がどうなるか」を予想することができないと思われます。(図を見る限り)今回は比較的固い素材を使っているようですが、柔らかい素材を使った場合、インターフェース上の結果と実際に着せた結果は結構変わるのでは・・・?と予想されます。物理シミュレーション等を使用することで品質を向上できると思いますので、以下に参考資料を載せさせていただきます。
- Marvelous Designer
URL: https://www.marvelousdesigner.com/
- N.Umetani et al. "Sensitive Couture for Interactive Garment Editing and Modeling." ACM Transactions on Graphics (SIGGRAPH 2011)
b) 形状処理において可展面制約を考慮していないため、ケープのような形状(展開可能な形状)ならともかくより複雑なモデルの設計は困難であるであると考えられます。動物用の衣服生成は以下の論文にて考案されていますので、今後の研究の参考にしていただければと思います。
- F.Narita et al. "Quasi-Developable Garment Transfer for Animals." ACM SIGGRAPH ASIA 2017 Technical Brief, pp.26:1--26:4, Bangkok, 2017.11.27-30.
また、今回のケープなら問題ありませんが、今後の課題にあるワンピースを考えるときは、動物の可動域や動きも考慮可能なアルゴリズムとなることを期待しています。
2. ケープのテクスチャ編集について
(参考意見)UV画像に直接ペイントする機能を実装していますが、これに加えて3Dモデル自体に直接ペイントする機能(例:既存のソフトウェア「Cinema 4D」にも同様の機能が搭載されています)を追加すると、より良い操作性がえられると思います。
先行研究や周辺領域/サービスの調査が不足していると感じます。
ケープだけではなく、ペットの柄や毛の長さ等など作成する点は改善点も見当たりますが作り込まれている印象を感じています。
着眼点や将来性に期待できる研究と判断し、ショート採録(シェファーディングあり)と評価しました。