問題の発見、問題の分解、システムデザインと(特殊装置を用いない)実装、定量・定性両面の評価実験など、ロング採録を強く推すべき内容であると評価しました。
5.1節の実験条件の説明に曖昧な部分がありますので、具体的な実験設定を示してください。また今後の社会実装の際には今回の実験の想定を超えた状況が発生する可能性があると思われますので、将来的に現場での実験を行われることを期待します。
CHI2020で話題になった研究ですが、WISSでも大いに議論が盛り上がると思うので問題にならないと思います。
論文の書き方や構成という意味でしっかりしているので、推薦論文としてもぜひご検討いただければと思います。
各査読者のコメントを参照してください。
9: ロング採録を強く推す
2: やや専門からは外れる
視覚障碍者が列に並び、列の動きに合わせて移動していくという状況をスマートフォンのデプスセンサを用いてサポートするというものです。非常に完成度が高く、視覚障碍者による実験もしっかりとされており、ぜひ広まって欲しいシステムと感じました。
5.1節の実験の説明で、列にあらかじめ並ぶ人は2-4名としています。しかし図4を見ると、蛇行の条件では3人が並んだ後に1人が蛇行している様子が描かれています。もしこの図のとおりだとすると、2-3人が並んだときには蛇行にはならないと考えられます。また2人が並んだときはどうやっても蛇行にはならないのではないでしょうか。蛇行の具体的な実験設定を示してください。
図中の説明でSerpertineはSerpentineでしょうか。
8: ロング採録が妥当
2: やや専門からは外れる
本手法は,視覚障害者が個人で列に並ぶことを支援する手法の提案と評価です.例えばトイレや商品販売など,列はできるものの列を管理する人が割り当てられないような状況で特に力を発揮するシステムであり,かつ実装がスマートフォン1台に収まっているこることから,有用性の高さを特に感じます.インタラクションの評価も実施されており,課題についても詳細に述べられており,論文としての価値も十分に思われます.
気になる点としては,このシステムは音声出力をするシステムなので(骨伝導などのデバイスを利用する方法もありますが)周囲に音が聞こえた時の「周囲の行動」がどうなるか興味があります.システムは適切に道を誘導しているのに,最後尾の人が気を遣って場所を動いたりすると実は余計な問題が起こる,のような,視覚障害者と健常者との間のやりとりに踏み込む必要があるのではないかと考えます.
また,壁に掲載されているマーカのオクルージョンに関しても議論が必要かと思います.追加のデバイスを用いないことが本手法の利点だということは分かっているのですが,カメラの画角とマーカの入る範囲を考えると,例えば広角レンズや天井向きのカメラ/レンズなどの利用を検討するほうが適切なのではないか,という気もしてきます.
これらは軽微な疑問ですが,これ以外にも様々な場面,状況での利用について議論ができれば良いと思います.
全体として,ロング発表での採択が妥当であると考えます.
論文中の図に出てくる「Serpertine」は「Serpentine(蛇行した)」の誤りかと思います.
9: ロング採録を強く推す
2: やや専門からは外れる
問題の発見、問題の分解、システムデザインと(特殊装置を用いない)実装、定量・定性両面の評価実験など、ロング採録を強く推すべき内容であると評価しました。
ここまではラボ実験としてひとまず十分に感じますが、実際に社会の現場で作られる列はこの想定の範疇を超える状況になる可能性があります。そういう意味で、現場での実験に期待しています。
現時点では支援方法がほとんどない問題に対して、有用で現実的な手法を提案されたと思いますが、それをさらに他の手法によって超えられないかを検証されるとさらによいと思います。
本論文は視覚障碍者が列に並び、列の動きに合わせて移動していくという状況をスマートフォンのデプスセンサを用いてサポートするというものです。問題の発見、新規のデバイスを用いない解決、評価実験など見るべき点は多く、世間に広まることを予感させる研究となっています。