査読者 1
総合点
4
確信度
2
採否理由
本研究は仮想物体の接触感を提示するために,ペン先が伸縮可能なペン型デバイス「ExtickTouch」を用いて仮想物体の表面形状を触知できるシステムを提案しています.
【提案されている内容の新規性】
本デバイスを用いることで,自由な位置(角度)で仮想物体を触知できる点やなぞるような連続的な接触感を提示できる点に新規性があります.ただし,提案されている先端伸縮型デバイスの形状が,先行研究のHaptylusと極めて類似しており,新規性はやや低いと思います.
【有用性・正確性】
・本研究で提案されているペンでなぞる操作方法がユニークだと思います.ただしペンでなぞる操作方法が具体的にどのようなシーンで効果を発揮するのかがよくわかりませんでした.筆者らが考える効果的な利用シーンについて追記して頂ければ幸いです.
・提案されたデバイスは,ペンの側面に把持するハンドル(Oculus Touch)が装着されていますが,ペン型デバイスによる接触感なのか,Oculus Touchからの振動の影響なのか判断しにくいと思いました.そのため,ペンそのものを把持する形状での検証が必要だと考えます.
・実世界でペン先が机に接触する角度とVR空間上でペン先と仮想物体が接触する角度は異なるように見えましたが,どのくらいの角度差まで許容できるのでしょうか?角度差が大きくなった時の影響についても検証が必要だと思います.
・全体の論旨についてですが,P2 右上 「実物体に触れたかのような仮想物体の接触感を腕全体に提示する手法を提案する」との記述に対し,3章以降から腕全体に接触感があるかどうかを言及した部分がありません.腕全体で感じるデバイスを主張していると思いますが,評価実験では腕までへの影響は検証していないため,腕全体に接触感を与えるという結論に至っていないと思います.
【論文自体の記述の質】
体裁の不備・不明瞭な表現がありましたので,十分に推敲して頂きますようお願い致します.以下に,査読中に気付いたところを列挙します.
・P1 「まだまだ発展途上である」→未だ発展途上である/未だ発展途上の段階である.
・P1 左下 「どの程度の接触感」→程度ではなく,仮想物体の形状との一致・不一致を確認したのではないでしょうか?
・P1 「現実に近い物体への接触感が提示できることがわかった。」→本論文内では現実の物体との比較実験等はされていないので,「仮想物体の接触感が提示できることを確認した。」等に修正して下さい.
・P3 図3のExtick Touchの構成がこの図だけではよくわかりません.リニアアクチュエータを取り付けた位置や,伸縮部分の機構,OculusTouchの接着方法についても記載して下さい.
・P3 図4のシステム構成も図3同様によくわかりません.ペン先の駆動を制御するためのArduinoはPCか何かに接続されているのでしょうか?また,VR描画用のPCがどこに接続されているかも不明です.構成要素がどのように繋がっているか明記して下さい.
・P5 図7の(b)VR空間で左手にもOculus Touchを把持しているように見えます.この役割も記述して下さい.
・P5 図8 実験で用いた3種類の仮想物体の(球体・三角錐・斜面)それぞれの大きさ(縦・横・高さ/斜面については傾きも)について記載してください.
・P5 図9のグラフではQ3以外に有意差があったことが確認しにくいです.また横軸の単位は質問番号が記載されていると思われますが,抜けていますので明記して下さい.
・P6 図10と図11の3種類の仮想物体に対しての回答率の数値を明記して下さい.
・P6 左下 「比較的正確に認識できたため」→何と比較して?比較対象が無いのであれば「比較的」の文言は削除して下さい.
・P6 左下 「得意な形状とそうでない形状」→得意な形状と不得意な形状等
・P6 右上 「借用する」→利用する、提示する等
この研究をよくするためのコメント
・P6 「はっきりと分かれる結果」と記載されていますが,図10を見る限り,球体と三角錐・斜面は分かれているものの,三角錐と斜面は同等に見えます.球体と三角錐の比較だけではなく,三角錐と斜面が同等の識別であった理由も考察に入れると良いと思います.
・P6 右上 「Q1〜Q6の回答結果からもわかる通り,当然のことながら振動だけで接触感を提示するのは難しいことが見てわかる。」と記載されていますが,図11の結果によると,振動提示では斜面を選択した被験者は0人であったように見えます.つまり,振動提示を与えた場合,斜面の認識が確実に出来ているという結果として見ることもできると思います.文章を修正するか,振動だけで接触感を提示することが難しい理由を述べられると良いと思います.
・Oculus Touchから取得する座標に誤差が生じた場合,仮想物体とのズレは補正しているのでしょうか?補正等の工夫点があれば掲載を検討して下さい.
採録判定時のコメント
ペン先が伸縮可能なペン型デバイス「ExtickTouch」を用いて仮想物体の表面形状を触知できるシステムを提案しています.先行研究の「Haptylus」や「ImpAct」を比較して新規性が低いものの,ペンでなぞる動作に対してフィードバックを与える点に新規性が認められます.一方,全査読者が指摘しているように,先行研究の「Haptylus」や「ImpAct」等と比較して,利用環境の制約が多くなり,有用性が低くなっている点に対して疑問が残りました.以上の結果から,ショート採録(採録条件あり)と判断しました.
レビューサマリ
新規性・有用性に関して追記及び修正をして頂くことが前提の条件付採録となりますので,査読コメントを反映して最終原稿を仕上げて頂きますと幸いです.
【採録の条件】
・Haptylusが引用しているImpActも引用して下さい.
ImpAct: Enabling direct touch and manipulation for surface computing Anusha Withana et al., UIST2010
・提案システムでは,先行研究の「Haptylus」や「ImpAct」と比較して利用環境の制約が多くなっているように思われます.利用環境の制約によるメリットとデメリットを追記して下さい.
・著者らが考える「ExtickTouch」の有用性(VR用途での具体的な利用シーン)について追記して下さい.
【その他指摘事項】
採録の条件ではありませんが,以下の指摘事項について確認・訂正を検討して下さい.
・P1 「まだまだ発展途上である」→未だ発展途上である/未だ発展途上の段階である.
・P1 左下 「どの程度の接触感」→程度ではなく,仮想物体の形状との一致・不一致を確認したのではないでしょうか?記述を見直して下さい.
・P1 「現実に近い物体への接触感が提示できることがわかった。」→本論文内では現実の物体との比較実験等はされていないので,「仮想物体の接触感が提示できることを確認した。」等に修正して下さい.
・P3 図3のExtick Touchの構成がこの図だけではよくわかりません.リニアアクチュエータを取り付けた位置や,伸縮部分の機構,OculusTouchの接着方法についても記載して下さい.
・P3 図4のシステム構成も図3同様によくわかりません.ペン先の駆動を制御するためのArduinoはPCか何かに接続されているのでしょうか?また,VR描画用のPCがどこに接続されているかも不明です.構成要素がどのように繋がっているか明記して下さい.
・P5 図7の(b)VR空間で左手にもOculus Touchを把持しているように見えます.この役割も記述して下さい.
・P5 図8 実験で用いた3種類の仮想物体の(球体・三角錐・斜面)それぞれの大きさ(縦・横・高さ/斜面については傾きも)について記載してください.
・P5 図9のグラフではQ3以外に有意差があったことが確認しにくいです.また横軸の単位は質問番号が記載されていると思われますが,抜けていますので明記して下さい.
・P6 図10と図11の3種類の仮想物体に対しての回答率の数値を明記して下さい.
・P6 左下 「比較的正確に認識できたため」→何と比較して?比較対象が無いのであれば「比較的」の文言は削除して下さい.
・P6 左下 「得意な形状とそうでない形状」→得意な形状と不得意な形状等
・P6 右上 「借用する」→利用する、提示する等
その他コメント
査読者 2
総合点
4
確信度
2
採否理由
提案デバイスはユーザの動作を妨げない手持ち型デバイスでありつつ,腕全体に対して物体に接触した感覚を得ることができることが新規な点であると読み取りました.既存手法の備え付け型は腕全体に触覚フィードバックでき,持ち運び型は振動による手の接触面のみへのフィードバックであり,一長一短であることを指摘しています.その中で両者のいいとこどりするために,ある程度の環境の制約を設けていることも理解しました.
その制約は4.2節第2パラグラフにある「実世界に配置されている実物体と同じ位置に配置されている仮想物体」かと思いますが,この制約がVR用途において妥当であるか疑問を感じています.バーチャル空間に入るために没入型HMDを使用しているのに,目の前にある実世界と同様の物体を触るということの意義の説明が必要です.
実世界と同じものを配置するならばARで必要な情報だけ重ねて提示すればよいかと思います.例えば実空間では目の前に机があるけれども,VR空間ではボールや人体に触れることができるというのであれば有用であると思います.
著者らの提案手法のアイデアの新規性の程度と比較して,利用環境の制約の度合いのほうが大きいように感じます.
もう1点査読者の疑問として,提案デバイスと実際の机との距離が計測できるのであれば,VR空間の机の(ユーザとの相対的な)位置を実空間の机の位置に合わせれば,単なる棒でも同じことが実現できるのではないかと思います.
この研究をよくするためのコメント
査読者 3
総合点
3
確信度
3
採否理由
アクチュエータを内蔵し,長さを帰ることが出来るペンによって触覚提示を行うデバイスの提案です.
本研究の大きな課題は新規性です.Haptylusとの差分として,p2 「Haptyluysのような必要な場合のみ接地する構造を用いたデバイスであっても,現実に近い視覚情報を同時に提示できるようなシステムは開発されていなかった」とされています.ただそうすると,本研究の新規性としてはタブレットをHMDに置き換えただけと見ることも出来るかと思います.ですので新規性はやや小さいと判断します.
この新規性がどの程度有用性につながっているかと考えると,タブレットであればある程度タブレットを持つ手を動かすことで提示可能範囲を大きく出来るという効果もあったかと思いますが,設置型としたことによってかえってその利点が失われているとも言えるかと思います.
実際,こうした長さを変えられるデバイスの場合,正確な力を出すことは出来ないので,どちらかというと科学的に有用な知見は,「それでもなお,正確な力を出せるデバイスと比肩しうる表現力がある」かどうか,かと思います.しかし今回の評価実験はすべて振動との比較ですので,その意味での評価は難しいと思われます.
引用文献としてHaptylusを挙げられていますが,そのHaptylusが引用しているImpActも引用することを勧めます.
ImpAct: Enabling direct touch and manipulation for surface computing
Anusha Withana et al., UIST2010
この研究をよくするためのコメント