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査読者 1

総合点

7

確信度

2

採否理由

本論文は自己修復するインタフェースという概念の提案とその実現化に向けた手法の提案、提案インタフェースの使用アプリケーション例の提案を行っています.

使用する素材自体には新規性はありませんが、提案されている自己修復インタフェースという概念およびそのアプリケーション例は非常に新規性があり、新しいユーザインタフェースとそのあり方を議論するWISSという場にふさわしい論文と思われます.しかし、使用素材の組み合わせやその制限に関しては、より一層の議論が必要であると考えられます.

この研究をよくするためのコメント

PBSの使用においては、インタフェースの構造や形状によって時間経過後にPBS単体として使用した部分がクリープして構造が崩れたり、ショートや断線が起こらないかについて疑問が残ります.例えば図5Bのように、PBSのみの層を設けた時に、そこだけクリープしてしまうなどです.
また、導電性が必要なく、クリープさせたくない場合もあるかと思います.
この改善のために、ナノファイバと同様の構造を持ち、クリープの起こりにくい非導電性の物質を混ぜることを検討するか、可能範囲、本インタフェースで対象とする範囲を限定させたインタフェース構築のための支援技術などの構築も行うことをお勧めします.

採録判定時のコメント

本論文はMWCNTs-PBSを用いた"機械的・電気的自己修復を可能とするSelf-healing UIインタフェース"を提唱し、その構築手法の提案と性能評価、使用アプリケーション例の提案を行っています."自己修復するインタフェース"という概念の挑戦的新規性とアプリケーション例は特に高く評価しています。発表ではアプリケーション事例からさらなる活用法や設計手法について議論が行われることを期待しています。

レビューサマリ

3名とも提案アプリケーションや着眼点に関しては高く評価し、WISSで発表されるべき論文ととらえています.

そのうえで、使用素材および構造の妥当性と再現性、安全性、ロバスト性に関する記述や評価の不足に対して指摘しています.

そのため、以下の点を採録条件とし、条件付きの採録といたします.特に、安全性に関する点(1,2項目目)は必ず論文中での説明を行ってください.

・現在のファブリケーションのプロセス、実際の利用、利用シーンでの加工において本当に飛散しないのか。その根拠を実験的に示すことはできるのか(カメラレディ提出までに実験の実施が不可能でも、実験方法に関しての議論と、現時点での仮説を述べてください.また、発表時までに実施することを強く勧めます.)
・指定方法以外の切断を行い、PBSが飛散した場合、どのように人体に影響があるのか(例えば肺がんのリスクなどはあるのか)
・提案素材の接続が、単なる癒着なのか著者らが目指している電気的かつ機械的な自己修復なのか、評価か論拠を踏まえて実証してください.
・加工時の電気的特性の変化や弾性の変化について記述し、切断と接着を繰り返した際のロバスト性に関して議論を追加してください.
・提案インタフェースの構築を可能とする他の素材があれば、説明として追加してください.

その他、各査読者からのコメントを参考に、推敲と改訂を実施してください.

また、もしデモ発表も考えている場合は、特に安全性に十分配慮して実施の可否を検討してください.

その他コメント

査読者 2

総合点

8

確信度

2

採否理由

PBSとMWCNTs-PBSの融合による自己修復型のセンサインタフェースの提案です。自己修復型のインタフェースという新しいことに取り組んでいる姿勢は素晴らしいと感じました。

論文にいくつかの疑問点があります。
- 配線の取り回しなどで、結局提案している加工の柔軟性は落ちてしまうのではないかと考えます。その点、今後どのように解決していくのか知りたいです。
- また加工性があるために、特に圧力検出などでは、その都度キャリブレーションの作業が必要になるのではないかと想像します。また素材の弾力性については議論をしてほしいです。どの程度の力を加えると原型から崩れてしまうのかなども知りたいです。軽い力で壊れてしまうならば、導電性の粘土と実現できることは本質的にどういった部分が異なるのか議論がほしいと思いました。

また安全面にも疑問点があります。
「MWCNTs はナノ粒子なので,空気中に飛散すると人体に有害になりうる.しかし,MWCNTs-PBS の状態の MWCNTs は PBSに分散し閉じ込められているため,飛散せず,もちろん直に触っても手が黒くなることはない.」「PBS をレーザーカットしようとすると,発生する熱によって素材が変性してしまう他,MWCNTs のナノ粒子が飛散する危険性がある.そのため現状ではナイフで切断を行っている.」という記述が気になりました。

- 飛散するとどのように人体に影響があるのか(例えば肺がんのリスクなどはあるのか)
- 現在のファブリケーションのプロセス、実際の利用、利用シーンでの加工において本当に飛散しないのか。その根拠を実験的に示すことはできるのか
- もし著者がデモを希望するときには細心の注意を払った方が良い

この研究をよくするためのコメント

査読者 3

総合点

5

確信度

1

採否理由

本論文ではPBSとMWCNTsを用いた電気的かつ機械的に自己修復可能な素子(素材)を提案しています.論文を読む限り,切断した素材でも正常に機能し,切断した素材どうしを癒着させることもできるように思いますが,単なる癒着なのか著者らが目指している電気的かつ機械的な自己修復なのか,評価が行われていないため判断できません.デモ動画を見ても同様に判断できません.既存研究によりPBSとMWCNTsそれぞれの化学的性質は示されているようですが,それらをハイブリッドで使用することが本研究の提案であるため,理論通りに働くかは自明ではないと思います.

光や熱などの刺激が無くても修復する点をメリットとして挙げていますが,デバイスを重ねて収納すると一つにくっついてしまうかと思いますので,管理の手間が増えるようにも思いますので言及すべきかと思います.

アプリケーションではいくつかのインタフェースを実装して動作の確認まで行っている点は評価できますが,では,実際にこれらのインタフェースを提案している使い方で使うのかという点では疑問が残ります.素材としては面白いと思うのですが,現状ではHCIへの貢献の観点では少し弱いように思います.

この研究をよくするためのコメント

1章で「(1)柔軟な素材は一度壊れると簡単には修理できない」という記述がありますが,柔軟でない素材は簡単に修理できると読み取れ,理解できませんでした.

また,論文全体を通して「~できる」という断定的な表現がいくつか用いられていますが,できる(できた)かどうかは評価等を通して示されるべきかと思いますので,提案の段階では「~できると考えられる」のような表現にされた方が良いと思います.