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査読者 1

総合点

6

確信度

2

採否理由

群舞向けの振り付け確認のシステムとして、先行手法に比べて技術的には簡素になっているがその分、使用条件が手軽になっており、導入へのハードルが低い。

個々の仮想ダンサーの表現が、先行研究では抽象的な棒人間での表示が可能である一方で、提案手法は写実的な表現のみサポートされている。論文で議論されているように、衣服の揺れなどの細かいところが確認できるのは強みである一方で、はたして群舞のエディット環境として写実性が高いことが望ましいことなのかどうかの議論をしていただきたい。様々な分野における研究で、抽象度の高い表現の方が実態の把握をより深めるといった議論がなされているためである(ピクトグラムのように)。

有用性についての判断は難しい。先行手法と提案手法とで共通するものもあれば異なるものもあるのだが、それらの違いが実際の利用者にとってどう影響するのかが論文からは判断しにくい。全体的に論文としてのわかりやすさは高いのだが、この点については情報が不足しており、ダンス振り付け経験のない読者には判断のしようがない。提案システムで制作した群舞が実際に踊ることが可能なのかどうかについての追跡調査も待たれよう。

ワークショップ論文としては申し分ない内容であり、採録と判断する。

この研究をよくするためのコメント

今後より有用性の高い論文としてブラッシュアップする過程で、採否理由にてコメントした内容について検討されたい。

採録判定時のコメント

群舞向けの振り付け確認のシステムとして、先行手法に比べて技術的には簡素になっているがその分、使用条件が手軽になっており、導入へのハードルが低いため、より多くのユーザが使えるシステムになっている可能性がある。

ただし、提案システムの定量的な評価実験がなされておらず、有用性については判断ができない。多くの要素が絡む提案であるため、個々の要素を分解した上での評価実験の実施が期待される。

レビューサマリ

提案システムが先行研究に比べて十分に新規であり、興味を引くものであることについては全査読者が同意している。ワークショップ論文としては十分な内容があると判断したため、ショート採録を推す。

一方で、その有用性が実証されている訳ではないため、査読者にとって判断が難しいという点でも全員が同意している。それぞれ査読者で指摘している点が異なっているので、それぞれのレビューコメントを読んで検討されたい。

有用性について、もしすでにダンス経験者のコメントを反映し、その知見を活かした設計になっているということであれば、それを論文内で記述されたい。現状の書き方だと、ダンスを知らない研究者が思いつきで設計したものなのか、それともダンス経験の豊富な研究者が、確かな知見に基いて設計したものなのか、判別ができない。

その他コメント

査読者 2

総合点

6

確信度

3

採否理由

グループダンスの振り付けをするためのツールとして開発されたDance Unisonerはモーションキャプチャや深度情報つきのカメラを必要とせず,一般的な動画からグループダンスを生成できるという点が新規性と受け止めています.
一つのダンスを隊列を組んだ集団に躍らせる,一部反転させる,大きさを変える,タイミングをずらしてより現実に近づけるなど多彩な機能を持っており,初歩的な振り付けにおいてイメージの可視化を助けるツールとして有用と判断しました.
また,論文の内容も先行研究の解説,機能の説明,なぜそのように作られているのかなどわかりやすく丁寧に説明されています.
査読者はダンスの振り付け経験はなく想像で判断していますが,素人としてこう行ったツールを使い,グループダンスのイメージを可視化してみたいと思えるだけの内容を持っています.
一方でDance Unisonerは同一モーションを全員が踊ることが前提となっていたり,ダンス中の移動などは考慮されていないなど,だいぶ機能が絞られています.では今後どのような機能が必要なのか,あるいは必要ないのか,そもそもグループダンスとはどのように面白く,どのような効果があるのかなどの議論はあまりされていません.その点についてはWISSで発表するシステムとして活発な議論が見込まれるため,採録として推しています.
実験は行われていませんが,解説は十分にされており,WISSの発表に際しては不要と判断しました.

この研究をよくするためのコメント

採録理由にも書いたとおり,議論が不十分な点があると感じます.ある程度自己考察が含まれているとその後の議論もより有益なものとなり得るのでそこは改善の余地があります.

査読者 3

総合点

4

確信度

2

採否理由

1人で踊った動画をコピペの要領で3次元空間に配置してグループダンスの動画を作成するシステムについての論文です。論文で主張されているように振付師がグループダンスを振りつける場合に手軽に使えて、想像だけで考えるよりもイメージしやすくなることがある程度有用だと想像されます。個々の要素技術やインタフェースとしての新規性はないですが、システム全体(デザイン)としては新規性があります。

しかし、グループダンスの振り付けの経験を持つ人の意見がデザインに取り入れられていると判断できる記述が論文にないため、もっと重要度の高い機能が漏れているなど的外れなデザインとなっている可能性が否定できません。WISS参加者と議論するよりも振付師と議論した方が実りが多い段階だと思われます。最後に書かれている、同じ踊りをコピペする違和感の要因についてはWISS参加者と議論すべき興味深い点ですが、論文全体のストーリーから外れていてとって付けたような印象があります。

以上の理由により強く採録を推すことができないと判断しました。

この研究をよくするためのコメント

システムの使い方の説明が(添付のビデオを見ればわかるのですが、論文だけでは)わかりにくくなっています。ユーザインタフェースの説明、実装の説明が3章と4章に散り散りになっているのが一因だと思います。今後、グループダンスの振り付け動画には何が求められるのかを振付師へのインタビューなどに基づいて整理するなど研究を発展させそれを3章とし、4章はできたシステムのユーザ視点での説明、5章は実装の詳細、などとするのが良いと思います。

本システムでまだ実装されていない重要度の高い機能の一つとしては、フォーメーションの時系列的な変化が考えられます。引用されているシステムではフォーメーション移動にある程度対応しているものもあります。このシステムでは16小節程度の区間を対象としていて楽曲全体の振り付けは対象外という区分を想定していると推測できますが、どこまでを目標としているのかを明確にしていただけるとわかりやすい論文になると思います。目標を明確にするためにも振付師へのインタビュー調査などを行うことをお勧めします。