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査読者 1

総合点

7

確信度

2

採否理由

スマートフォンやスマートウォッチのタップ操作において、指ではなくデバイスを動かすことで通常のタップとは異なる入力として扱えるというアイデアは先行研究と異なっており、シンプルでありながら有用性があると考えられる。
一方で、著者らが指摘するように、デバイス側を動かして特定の場所をタップする操作は画面に平行な方向(奥行き方向以外)の移動を伴うため、実験に用いた端末よりも大型な画面を有するデバイスでは、エラー率や認識精度が下がる可能性があると考えられるので、今後の検証に期待したい。
なお、投稿時点の論文には多くのtypoが見られた。十分に精読した上で投稿されたい。

この研究をよくするためのコメント

スマートフォンの画面サイズは大型化の傾向がある一方で、従来通りの大きさの画面を好むユーザもいるため、異なる画面サイズでの検証を是非行って欲しい。

第4章で左利きの被験者では加速度とジャイロセンサーの正負を逆転させたとあるが、X軸のジャイロセンサーを逆転させる意図が理解できなかった。

第5.2章で入力位置ごとの難易度に関する主観評価の結果を示しているが、この結果が本論文全体でどの部分の議論に寄与しているかを明示して、この評価の意味を分かりやすく示すことが望ましい。

第6.3章で「全被験者が,最初にデバイスの XY 方向における位置を調整し〜」とあるが、デバイス側を動かすことで調整するという意図なのか、理解できなかった。また、「一方で,画面全体をターゲットとすることで実現可能性を検討できる.」の意図も理解できなかった。

以下はtypoと思われる:

・第3章
「身体的負荷伴う」
1箇所だけ「スマホ」と記載されている

・図2のキャプション
「話す」

・第4.1.1章、第4.1.2章
「10mm 以上ののマージン」

・第4.1.2章
「30mm とな場所」

・第5.1章
「図4(従来)」は図4(a)の誤りか

・第5.3章
「クロスバリデーションによりにより」

・第6.1章
「腕関節」は手首関節の誤りか

採録判定時のコメント

スマートフォン等のタッチサーフェスをタップする際、指ではなくタッチサーフェス側(デバイス側)を動かしてタップすると、内蔵する加速度センサー等により通常のタップと区別でき、別の入力として扱えるという内容です。
関連研究との新規性も明らかで、シンプルでありながら有用性があると考えられることから、ロング採録となりました。

レビューサマリ

いずれの査読者も、新規性と有用性の観点で高く評価しました。

以下2点の文献は、静電容量のタッチサーフェスと加速度センサーを組み合わて使う
という点で関連が認められるので、参考文献として引用されるのが望ましいと思います。

Goel, Mayank, Leah Findlater, and Jacob Wobbrock. "WalkType: using
accelerometer data to accomodate situational impairments in mobile
touch screen text entry." Proceedings of the SIGCHI Conference on
Human Factors in Computing Systems. ACM, 2012.

"Forcetap: extending the input vocabulary of mobile touch screens by adding tap gestures," MobileHCI '11.

なお、論文の記述にはtypoや不明な説明、用語が含まれるという問題があります。
各査読者のコメントをまとめましたので、下記については是非確認・修正してください。

・第3章
「身体的負荷伴う」
1箇所だけ「スマホ」と記載されている。

・図2のキャプション
「話す」

・第4章
左利きの被験者でX軸のジャイロセンサーを逆転させる意図が理解できない。

・第4.1.1章、第4.1.2章
「10mm 以上ののマージン」

・第4.1.2章
「30mm とな場所」

・第4.2章
評価実験でのセッション2のエラーについての記述が分かりにくい。

・第5.1章
「図4(従来)」は図4(a)の誤りか

・第5.2章
この主観評価の結果が本論文全体でどの部分の議論に寄与しているかを明示すべき。

・第5.3章
「クロスバリデーションによりにより」
CPUクロックのみに基づく所要時間推定の正確性が不明。

・第6.1章
「腕関節」は手首関節の誤りか

・第6.3章
「全被験者が,最初にデバイスの XY 方向における位置を調整し〜」とあるが、
デバイス側を動かすことで調整するという意図か。
「一方で,画面全体をターゲットとすることで実現可能性を検討できる.」が不明。

その他コメント

既存研究なみの認識精度を是非達成していただきたいことと、
大型ディスプレイのスマートフォン等でどのような認識精度に
なるかの検証が追加されるとよいと思います。

査読者 2

総合点

8

確信度

2

採否理由

・提案されている内容の新規性(先行研究との差分が十分にあるか)
指先でタッチデバイスを操作する際に,指先をデバイス側に向けて動かす場合(通常状態)とは別に,デバイス側を指先に向けて動かす場合を新たな入力手法として利用するというもので充分な新規性を有すると考えます.

・有用性(実際に役に立つか)、正確性(技術的に正しいか)
タッチ入力が発生する直前の500 ms 間のセンサデータを用いることで識別を高速にしている点など,有用性,正確性が高いと考えます.

・論文自体の記述の質(分かりやすく明確に書かれているか)
明確.

この研究をよくするためのコメント

原稿のチェックをお願いします.下記は一例です.
「10mm 以上のの」→「10mm 以上の」(2箇所)
「指と画面を話す際の」→「指と画面を離す際の」
「30mm とな場所へ」→「30mm となる場所へ」

査読者 3

総合点

8

確信度

3

採否理由

タッチサーフェスにタッチを行う場合,タッチサーフェスを固定し,指をタッチサーフェスに近づける動作を行うことが一般的であるのに対し,本論文では逆に指を固定し,タッチサーフェースを指に近づける入力手法を提案しています.
論文内では機械学習を用いた認識,被験者へのインタビュー,手法の特性や応用事例についての議論を行っており,現段階では十分な認識性能が達成できていないものの,提案手法の有効性を示唆しています.

著者らが関連研究として述べているTapSense[8]などと比較して,拡張される入力語彙は限られていますが,提案手法のアイデアや実装は非常にシンプルであり,査読者は提案手法に新規性や有用性があると評価します.
また,論文もWISSでの発表に十分な内容および品質で書かれていることから,「ロング採録が妥当」と判断します.

この研究をよくするためのコメント

是非,既存研究と少なくとも同程度の認識精度を達成していただきたいと思いました.

以下は,論文改善に向けたコメントです.
・理解が困難な記述が何カ所かありましたので,修正されるとさらに良いと考えます.
 例えば,評価実験でのセッション2のエラーについての記述や,CPUクロックのみに基づく所要時間推定,腕関節が何を示しているのか,など.
・関連研究として,"Forcetap: extending the input vocabulary of mobile touch screens by adding tap gestures," MobileHCI '11を加えたり,既存手法を別な観点から分類(例えば,実装上の違い(追加のセンサが必要か否か,用いるセンサ),具体的なジェスチャの違い)し,比較することも検討してみてください.