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査読者 1

総合点

7

確信度

2

コメント

紙に描いた正面図と上面図を用いて,造形物を作成する手法を提案しています.
造形物の設計に用いられるCADやPCの操作が不要となるため,高齢者や子供でも利用できるという特徴があります.
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著者らが述べているように,PUIでの3Dモデリングワークフロー,つまり,高齢者や小学生など一般的な3Dモデリングが困難な人に対して,自由度を下げる代わりに,簡易なモデリングや造形が行えるよう,工夫した点に,オリジナリティがあると考えます.(逆に,スケッチから3Dモデルを生成する研究はすでに存在しており,それを3Dプリンタで出力することだけでは,新規性は見いだすことはできません)
提案手法が有用であることは納得できますし,本論文を高く評価しますが,主張をより明確にするために,CADソフトとだけでなく,他のスケッチベースのモデリング手法との比較があると,なおよいと感じました.
また,ワークショップを行っているのであれば,本手法を適用したことによる効果やユーザが感じた問題点,例えば,創作意欲が沸いたのか,モデリング可能な形状の制限が創作意欲に影響を与えたのか,CADを学習したいと思うようになったか,などについても記述があると良いと思いました.

採録判定時のコメント

PC操作に不慣れな高齢者等でも3Dオブジェクトを製作できるよう、紙に描いた2面図から造形物を制作する手法を提案しています。興味深い研究ですが、製作可能な形状に制約が多いことに加え、そもそも研究の意義が不明瞭(=本当に初心者が使うのか?)という点に課題があることから、ショート採録となりました。

レビューサマリ

全体の構成: 本論文では、PC操作に不慣れな高齢者や子供を対象とし、紙に描いた2面図から3Dモデルを生成し,3Dプリンタで実際に造形物を出力する手法を提案しています.きちんと動作するプロトタイプを実装し,対象ユーザを集めてワークショップを行うことで,提案手法の有効性を確認しています. 改良に向けたコメント等: 本研究の意義が明確ではありません。本当に提案システムを初心者が使うのか? という点が疑問です。そもそも「初心者」は立体を2面図で表現することはできませんし、提案手法では製作可能な造形物にかなりの制約が生じます。むしろ、レゴブロックを使って制作した立体物をスキャンして3Dデータを得る方が、より「初心者向き」と言えるのではないでしょうか? より広範な従来研究との比較や深い考察を通じて,本研究の意義について述べてもらいたい.例えば,PC操作に不慣れなユーザが,設計にかなりの制約がある造形物を製作することにどのような意味や価値があるのか,またそのようなユーザが造形物を製作する際に,他にどのような手法が考えられ,これまでどのような取り組みがなされてきたのか,などについての記述があると,論文の主張が明確になり,より説得力を持つようになると考えます.

その他コメント

査読者 2

総合点

5

確信度

3

コメント

3Dプリンタから出力できる立体形状をモデリングするために、方眼紙の上に実寸大の二面図を描くという提案である。対象ユーザとしては、PCを用いた3DモデリングやPCの操作ができない人を挙げている。現状、3Dプリンタの出力にある程度の時間がかかることを考えると、紙を提出してもらって後日出力したものを渡すという時間感覚は、すべてにインタラクティブなレスポンスが返ってくるPC上でのモデリングと比べてストレスを感じさせない可能性もあると思われ、興味深い。実際にさまざまな形状が作成できることが確認でき、WISSとして採択してもよいと考える。
ただ、論文全体を通して、記述が細かすぎる印象がある。国際会議などに投稿する場合は、確実に4ページで十分に知見を伝えられる内容だと思う。

2章「2面図モデリング」では、PUIでないPC上のインタフェースで2-3面図モデリングできるもの(例えば著者らが関連研究で挙げている文献[12] 3D Modeling with Silhouettes)に触れたほうが親切だろう。

3章は空洞塗りと本体塗りを比べているが、それなら「PUIを用いたモデリングの有効性検証」は見出しにならないのではないか。せめて複数の節に分けて議論を整理してほしかった。
外周だけ線を引くとか、塗りつぶさず斜線だけにするといった方法もありえたはずで、最初からこの2つの塗り方ありきで議論が進むのも違和感がある。(実装コストやエラーレートの問題だと思うが、それならそういう議論がほしい。)

4章「ワークショップと作例」はよく読めばとても面白いが、読者が知見を抽出しやすいように小見出しなどをつけて整理してほしかった。
たとえば、読み取りに失敗したパターンを分かりやすくリストアップすると読みやすい。
また、なるべく具体的な数を使ってほしい。(「いくつか」「ほぼすべて」「ほとんど」のような表現を避けてほしい。)
作例を収集するだけでなく、より深い議論につながるコメントを得ることもできたのではないかと思う。

6章の議論は少々乱暴だと思う。
- 文献[12]は3Dモデルにスムージングをかけるという論文ではない。
- 二面図に比べ三面図を描く労力が1.5倍というのは単に線の長さであって、3面から見た形のつじつまをあわせる労力が考慮されていない。
- PCのようにインタラクティブなインタフェースなら、つじつまが合わないことをすぐフィードバックできるが、PUIでは不可能である。
- 6.2, 6.3ではユーザの誤りでなく画像処理におけるエラーのみを考慮しているが、上記のようなインタラクションの観点での難しさをもっと掘り下げてほしい。

その他のコメントを以下に示す。

- けっきょくボクセルを積み重ねた形状に限定したモデリングの話である
3章で「123D Design」を見せているが、栗原らのテトリス[a]やVoxel Builder [b]などを見せるべきだったのではないだろうか。
それらの手法と比較して初めて、PUIのよさが分かるように思う。
[a] https://sites.google.com/site/qurihara/home/t3dm
[b] http://voxelbuilder.com/

- 粘土によるモデリングとの比較議論が読みたい
Maker's Marks [c]のように、粘土で3Dモデルを制作して活用するインタラクションはよく研究されており、対象ユーザも本研究と重複している。
[c] https://bid.berkeley.edu/files/papers/makers-marks.pdf

- 原寸大に限らなくてもよかったのではないか
拡大率をスライダーで選ばせることもできたはずである。横向きの線を描いておき、左端を最小、右端を最大として意図する拡大率のところにアノテーションしてもらえばよい。

査読者 3

総合点

5

確信度

1

コメント

・評価できる点
PC上で3Dモデリング操作が困難なお年寄りや子供を対象とし、3Dプリンタでの出力を前提とした紙インタフェースに特化した、3Dモデル入力の提案をした点は興味深く、新規性があると考える。

添付のビデオからも実装がきちんとされていることが確認でき、9~81歳の男女7名にワークショップを行い、実際に使用してもらっている。

・疑問点
本システムではPC上ので3Dモデリング困難なユーザを対象としているが、PC上での入力の良いところとして、ユーザが入力した情報について、自動で補正や修正してくれるような、アシスト機能がある。
一方、紙インタフェースでの入力の場合、入力をアシストとしてくれるような機能がないため、図面の描き方を理解し、自身が望むような作品の出力を行うというのもなかなか難しいのではないかと考える。

会議では紙への入力を"アシスト"してくれるような機能についての展望もきいてみたい。

査読者 4

総合点

7

確信度

2

コメント

一枚の紙に書くだけで3Dプリンティングができるというアイデアは面白いですし、実装も評価もよくできていると思います。紙面が足りないかもしれませんが、関連研究がもう少し詳しければ読者にとってより有益だろうとは思いました。

論文としては問題無いとは思うのですが、筆者の方が本当にこれを使うのか? 一般モデラを使えない高齢者等が本当にこれを使うのか? と考えると実用性はかなり疑問に思われます。論文や動画で紹介されていた程度のものを3Dプリンタでつくる必要はないからです。

つまり現状では「誰も使わないが論文としては文句をつけにくい」というものであるのが残念なところです。今後このアイデアと実装をさらに発展させ、本当に筆者の方が日常的に利用するようなものができたところで普及をはかっていただけると良いように感じました。根本的にこの方法で作れるものは限界があるので難しいとは思いますが...