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査読者 1

総合点

5

確信度

2

コメント

運手情報をリアルタイムに採譜し、再利用できるシステムの構築という着目点は面白く、有用性を感じられる。
一方、評価部分では、いくつか問題も感じられる。
表2において未認識の場合と誤認識の場合で「認識率」の意味が異なるのは分かりづらい。また、叩打自体の判定は、MIDIイベントから取得しているように読めるため、そもそも未認識と判定される条件が不明である。

また、5.2の最後の部分で「これらの未認識を防ぐために,~」という記述があるが、その前の「全ての実験条件において未認識はみられなかった.」という記述と整合性が取れないため、見直すべきである。

その他、角速度センサーを用いた理由や他の方式に比較して優位な点などが示せるとなおよい。

採録判定時のコメント

ドラム演奏において、運手情報を付加しながら採譜するシステムという着目点は可能性を感じられ、プロトタイプもしっかりと実装されています。一方、角速度センサを使用した本手法と他の検出手法との比較の考察が抜けている、評価がプロトタイプの検出率に留まっている、などの理由から、ショート採録となりました。今後、提示方法や採譜したデータ活用の有用性なども含め、さらに踏み込んだ評価・考察がなされることを期待します。

レビューサマリ

全体の構成: ドラム演奏において、運手情報を付加しながら採譜するシステムという着目点は可能性が感じられます。運手の割り振りについても、プレイヤーが納得できるルール設定がされており、プロトタイプもしっかりと実装されています。 改良に向けたコメント等: ・本研究では検出に角速度センサを使用していますが、加速度センサを選択した理由や、他の手法との比較などについて触れられていません。システムが簡便であることが挙げられると思いますが、識別エラーは依然として残っており、識別率向上に関するディスカッションも不十分です。また、閾値に用いた具体的な数値(25msなど)の根拠が示されていません。 ・評価で用いれらている「誤認識」と「未認識」の違いが不明瞭です。 「全ての実験条件において未認識はみられなかった」とありますが、「提案システムは最初に MIDI メッセージを受信した場合にドラム演奏者が打面を叩打したと判定する」ともありますので、そもそも未認識と判定される条件が不明です。また、5.2の最後で「これらの未認識を防ぐために~」という記述がありますが、これは前述の部分と矛盾します。 ・図9ではスネアドラムの運手情報が黄色(左手)となっており、かつ誤認識というアノテーションがありますが、このスネアドラムは課題フレーズB上では右手なので、赤色ではないのでしょうか。 ・奏法によっては、提案されたルールが必ずしも適用できないと思われます。奏者がルール部を多少カスタマイズできる形にすると、より汎用性が上がると思います。 ・多くのドラム譜では、運手が複雑な部分やアクセントなどで、特殊な部分のみ運手情報を記載するものが見受けられます。運手情報をどのように記載するかについて、今後の議論に加えてほしいと思います。 ・取得手法の提案及び識別率の評価に留まっており、提案システムを用いたことによる学習効果などの検証が行われていません。そもそも運手情報を含めて採譜すること自体について、演奏者のレベルによって有用かどうかの意見が分かれると思います。提示の仕方や活用の方向性をさらに明確化できると、よりシステムの有用性を示せると思います。

その他コメント

可能であれば、実際にデモを行っていただけると議論が盛り上がりよいと思います。

査読者 2

総合点

4

確信度

2

コメント

運指情報の取得と楽譜への反映のドラム演奏に適用する試み自体には新規性はあると思われますが、以下の点に課題があります。

・加速度センサ2個という簡便さと、ドラム演奏の特性に基づいた「ルール」に基づく左右判定は評価できますが、識別エラーは依然として残っており、識別率向上に関するディスカッションも不十分です。例えば、システムの複雑さは増しますが、ドラム側にもセンサを設置すれば、どのスティックでどのドラムを叩いたのかを正確に取ることができると思われます(例:ドラム側にRFIDタグを、スティック側にリーダを設置するなど。

・現状では、運指情報の取得手法の提案及び識別率の検証に留まっており、提案システムを用いた場合の学習効果の検証は行われておりません。

・同時叩打分離の為の 25ms 閾値設定の根拠が示されていません。参照先を示すか、簡単な実験を行って根拠を示してください。

以上のことから、現状は論文の前半部分(検出機構の説明)であり、ショート採録がふさわしいと判断しました。ロング採録(=フルペーパ)には、学習効果の検証まで含めた総合的な記述が必要だと思われます。

査読者 3

総合点

4

確信度

2

コメント

システムをきちんと実装したところは評価できるのですが、そもそも左右叩打を区別することの重要性が疑問ですし、分別するために特に変わったアイデアや実装が利用されているわけではないので論文として発表する意義を感じません。

加速度センサを使う以外の方法は沢山考えられますが、それについて実験も考察もされていませんし、作った/動いた/という結果のみしか述べられていないようなのが残念です。スティックが回転したらどうなるのでしょう?

査読者 4

総合点

6

確信度

2

コメント

本論文はドラム演奏における採譜とともに,叩打順序を記録するためのシステムを提案している.
ドラム演奏において存在するルールを元に認識システムを設計し,そのシステムによる認識精度の評価を行っている.

評点の根拠:

当査読者はドラム演奏の経験がありますが,運手の割り振りについて納得できるルール設定がされており,
著者の想定通りに運手が採譜されるだろうという感触を得ています.
また,その問題設定・解決手法・設計に対する説明が(おそらく未経験者にも)十分わかりやすく記述されています.


論文改善のためのコメント、疑問,採択された場合の発表・議論に対するリクエスト:

・論文図9の記載について
 図9ではスネアドラムの運手情報が黄色(左手)となっており,かつ誤認識というアノテーションがありませんが,
 このスネアドラムは課題フレーズB上では右手なので,赤色ではないのでしょうか.

・角速度センサの利用について
 このシステムではスティックにつけた角速度センサで叩打を取っていますが,
 -スティックにシステムが付着することによる演奏への影響はないのでしょうか. 
 -角速度センサを利用した理由ないし他センサより優れた点などの議論がもう少し必要かと思います.
  (精度的には、現状たとえばクローズドリムショットは認識されにくいのではないでしょうか.)

・採譜した運手情報の記載について
 多くのドラム譜では,運手が複雑な部分や,アクセントなどで特殊な部分のみ
 運手情報を記載するものが多く見受けられます.
 論文では全運手記載か否かについては触れられていないように思いますが,
 運手情報の記載の仕方(全部載せるのか,採譜からある程度の基準を見出すのか)を
 今後の議論に加えて欲しいと思います.

・オープンハンド奏法や,ドラムセットのセッティングの個人差について
 ルール3に,ハイハットを用いた8ビートの演奏では両手は交差するとありますが,
 (少数派ではあるものの)オープンハンド奏法の場合,両手が交差しない形となります.
 奏者がルール部を多少カスタマイズできる形にすると,より汎用性があがるように思います.
 
・実際に叩打して認識する仕組みを活かす応用先として,
 クラシックでのスネアドラム及びその練習にみられる
 パラディドルなど左右の順番が複雑に入れ替わる奏法の採譜にも活用できるかと思います.

・発表時のリクエスト
 聴衆には様々な演奏技術のバックグラウンドを持つ方がいるかと思います.
 このシステムはおそらく初学者にとっては大きな助けになりますが,
 中級者以降へは,提示の仕方や活用の方向性をもう少し明確に示す必要があるかと思います.
 良い事例込での紹介を期待しています.