査読者 1
総合点
8
確信度
2
コメント
本研究が長期的目標としている「自然言語だけでなく図的な情報を扱う枠組み」というのは非常に同意できるところです。人間同士による対話を観察すれば実に自然な方向と考えられますが、現状あまり探索されていないのが(指摘されれば)不思議です。
その第一歩としての本論文の内容には特に付け加える点はありません。7項の将来の発展方向にある「入力された図形と、音声認識、自然言語の曖昧性解消の組み合わせ」には様々な可能性が考えられますし、自然言語だけでがんばってもこの先画期的なブレークスルーは難しいことを予想しておりますので、こうした研究がもっと盛んになることを願いたいです。
細かいことですが
1項の下から6行目、「ヒューリスティクスと入れておく」は「ヒューリスティクスとして。。」ではないでしょうか。
採録判定時のコメント
「自然言語だけでなく図的な情報を扱う枠組み」という、従来探索されていなかった分野に取り組んだ意欲的な論文です。現状では対象が基礎的な問題に留まっている点、また曖昧性解消のルールが、今後より複雑な問題になった場合に適用できるかといった疑問はあるものの、WISSで議論するにふさわしいと判断し、ロング採録としました。
レビューサマリ
全体の構成:
「自然言語だけでなく図的な情報を扱う枠組み」という従来探索されていなかった分野に取り組んだ意欲的な論文である。現状では新しい分野の基礎的な段階にあると考えられるが、今後のさらなる発展が期待される研究であると評価された。
改良に向けたコメント等:
・現状は図形の接続関係についてのトポロジーに変化がないものを扱っている。衝突などを扱う際には提案されている方式による記述が困難かもしれない。
・暗に図の下方からの重力場以外の場を排除している。古い文献だが、R. Smith の Alternate Reality Kit においては、重力場を表現するピースを明示的に配置することでこの問題の解決に取り組んでいたので参考にされたい。
・曖昧性解消の方法として、力学に特化したルールやヒューリスティクスを用いている。力学以外への拡張には、より一般化したルール設定が必要になるだろう。
その他コメント
査読者 2
総合点
8
確信度
3
コメント
第一節で主張されているような三つの新しい問題について果敢に取り組む試みでとても興味深い内容です.現時点ではかなり狭い領域の問題に留まり,その領域においてもさらなる検討を要すると思いますが,今後大きく発展する可能性のある研究分野を示唆してます.その点で新規性が高く,重要な研究だと思います.
論文の記述は明快です.対象とする物理現象が狭い範囲に留まっていること,そして検証例が少ないことがやや残念です.
論文を拝読した印象では,まず最初のアプローチとして制約が固定的な物理現象から始められたことを推察します.ここで制約が固定的と申しあげたのは,(1) 図形の接続関係についてのトポロジーに変化がないこと,(2) 暗に図の下方からの重力場以外の場を排除しているという点においてです.
(1) については,質点同士の衝突,あるいは質点と壁の衝突などの現象を考えると,衝突の一瞬だけ接している現象ですので,提案されている方式による記述が困難かもしれません.また,反発係数や摩擦係数は接している二つの物体の物理的な性質から定まるものであり,図に現れる物体の対ごとに与えられるものですので,表現が難しいかもしれません.
(2) のためには重力,電磁力など見えないものを表現することを求められるため,難しいかと思います.また,物体間の距離と物体の大きさとの比較において力を無限遠からの平行な力と考えるか,質点を中心とするものと考えるかという場合があり,文脈依存性があるのかもしれません.古い文献になりますが,R. Smith の Alternate Reality Kit においては重力場を表現するピースを明示的に配置することでこの問題の解決に取り組んでいました.
今後の研究でこのような点についても取り組んでいただくことを期待します.今後の課題に挙げられている課題を拝見すると,私には上述のような問題も同等に困難な課題ではないかと思われます.ご発表において,検討していただければ幸いです.
査読者 3
総合点
7
確信度
2
コメント
図式および自然言語で表現される力学系のような問題を自然に入力できるようにするとともに、数式処理システムによってその問題を解くことを可能とするアプリケーションの実現を目指し、その第一歩としての基礎システムを構築した論文と理解しました。
提案されているシステムは、図的な情報に関する曖昧性解消という目標に向けて何を実現する必要があるかを明らかにするという意味では十分なものになっていて議論もしっかりとされており、興味深く読みました。
一方、現時点の実装では、曖昧性解消の方法として力学に特化しルールやヒューリスティクスを用いており、基礎検討的なシステムであるように思われます。